寺院調査プロジェクト 「都市寺院調査」
大都市における本宗寺院の現状と
新たな開教布教の可能性をさぐる
札幌市 (中間報告 アンケート回答を中心に)
はじめに
過疎地寺院の調査レポートを提出後、 視点を人口過密地である大都市に移し、 そこでの本宗寺院の置かれている状況、 さらに団地布教等新たな開教の可能性を探ることをテーマに、 調査のための資料作成、 研究討議を行い、 仮説立案を進めてきた。
大きくはA、 B二つの柱に分けられ、 さらに細分化される。
A. 大都市における本宗寺院の現状。
@一般に希薄と言われる寺院と檀信徒の関係がどういう状況にあるのか。
A社会的に取り沙汰されることの多くなった墓地、 葬儀、 戒名等の問題を寺院の側はどう考えているのか。
B現状に対して寺院の側の認識は安心感か危機感か、 いづれの意識か。
C僧侶不足の大都市と檀信徒不足の過疎地が交流して共存共栄の道はないか。
D墓地不足、 ドーナツ化による人口減少、 行事の低迷化等さまざまな諸問題の本質はどこにあるのか。
B. 大都市における布教と開教の方策を考えるために、 宗教問題全般を調査、 整理する。
@大都市における市民の宗教に対するニーズはどこにあるのか。
A都市ごとに異なる宗教問題の特質の整理、 分類。
B墓地や葬祭場、 さらには心の悩み相談も含めて、 大都市における開教の必要性と可能性。
以上を考えてきたときに、 現代社会の問題をいち早く表面化させる大都市において、 これまでの教団の布教方法と、 市民との間に大きなズレが生じているであろうことは想像に難くない。 そこで戦後設立された寺院数を都道府県別に整理すると、 単純な数では東京、 北海道、 神奈川、 大阪、 埼玉の順で都市化の顕著な地区と対応していることがわかる (『日蓮宗寺院大鑑』 池上本門寺刊より集計)。 しかし旧来の寺院数の割合をもとにした増加率からいくと、 沖縄、 鹿児島を別として福島、 埼玉、 茨城、 山形、 宮城の順となり、 北海道は9位、 大阪 13 、 東京 19 、 神奈川 30 位と、 埼玉を除いて東北地方に多いことがわかる。 この場合、 一般に九州も含めて修法が盛んと言われる地方に増加率が高く、 管区別の全教師中、 修法師の比率でみても東北、 北海道、 九州が 45 %前後と他の管区の中でも群を抜いて顕著である。
本宗の修法布教が戦後、 地方において新寺建立にはたした役割は大きいと言える。 一方、 その永続性という面で捉えた場合、 廃寺、 無住の詳細な資料の入手が不可能な現状で、 分析に着手できなかった。 これらから考えて、 大都市における布教、 開教に修法が一つの大きな武器になることは十分考えられるが、 最適な布教手段と断定することはできない。 こうした点も含めて、 プロジェクトでは大都市に住む人々の意識と布教方法の問題を探るべく、 調査、 研究を進めている。
その中間報告として、 戦後設立の寺院数、 その増加率、 修法師の比率がいづれも高い北海道で札幌市を対象に現地調査を実施した。 そこでは、
(1)札幌市の宗教全般の状況として、 新宗教、 キリスト教、 葬儀社、 霊園の関係者に面接調査
(2)本宗寺院の現状と教師の側の認識をアンケート調査及び日青会員による座談会
さらに予備調査を含め3回赴いた。 今回はその中間報告として(2)本宗寺院の現状と教師の側の認識に対するアンケート調査の中間報告である。
T 調査経過
1. 予 備 調 査 1993 年2月 15 日〜 17 日
北海道西部宗務所、 北海道庁訪問、 資料収集。
2. 第1次調査 1993 年3月 30 日〜4月2日
A班 市内石材店、 霊園、 納骨堂、 葬儀社等6カ所
B班 市内本宗4カ寺
C班 カトリック教区事務所 阿含宗
北海道クリスチャンセンター 立正佼成会
3. 第2次調査 1993 年9月2日〜3日
札幌市内23カ寺アンケート回収
日青会員座談会 「都市開教の可能性と問題点」
4. アンケート内容
※次頁参照 U アンケート集計の結果についての考察
※調査項目は多岐にわたるが、 中間報告ということでもあり宗勢調査と比較分析できる項目を主に取り出して考察した
※文中および集計結果の 「宗勢調査値」 は、 平成4年度宗勢調査による
※項目の後ろの数字は、 アンケートの質問番号
1. 住職の年齢 [T−(1)−a]
住職の年代層は、 宗勢調査値によると60代が23.1%と最も多く、 40 代、 50 代、 60 代、 で全体の 65 %を占めている。 ところが本調査では、 40 代が 44 %で最も多く、 次いで 50 代の 22 %、 60 代の 17 %と続いている。 このデーターから、 札幌市の寺院では、 40 代を中心として若い世代の住職によって構成されていることが特徴的であるといえる。
2. 住職の経歴 [T−(1)−b]
住職歴を宗勢調査で見ると、 10 年台 ( 11 年〜 20 年) が最も多く、 20 年台 (21 年〜 30 年), 30 年台 ( 31 年〜 40 年) と続いている。 しかし、 本調査では、 20 年台が 30 %、 また一方で5年以下という住職歴の短い教師が、 同じく 30 %で共に第一位であった。
特に5年以下という短い住職歴は、 宗勢調査値では、 13.8 %であることから、 若い住職層が多いことが札幌の特徴であるといえる。
3. 住職の出身 [@−A−c]
全住職にB現在の寺院の出身であるか。 T他の寺院の出身であるか。 (2)在家の出身であるかを尋ねた。 宗勢調査では、 現在の寺院と他の寺院の区別はせず、 「寺院出身」 という調査データーのみではあるが、 これと比較してみた。 すると、 寺院出身は 62 %であるが、 本調査の寺院出身は、 52 %にすぎなかった。 つまり、 約5割 ( 48 %) に近い人たちが在家出身であることが札幌寺院の特徴である。
4. 後継者の有無 [T−(3)−c]
後継者の有無は、 宗勢調査では 65.4 %が 「有」 と回答している。 この項目について本調査では、 宗勢調査とまったく同様の 65.0 %という数値が出ている。
札幌市の寺院後継者の比率はこのように宗勢調査と一致するが、 一方で 35 %の寺院に後継者が無いという事実も見過すことはできない。
また、 この問題については、 前回の宗勢調査 (昭和 63 年度実施) より横這いの傾向が続いていることも付記しておく。
5. 檀信徒の状況 [T−(3)−a]
各寺院の檀家数を見ると、 200 戸以下という寺院が65%を占めている。 この数値は、 宗勢調査の同じ 200 戸以下の 74.8 %に準ずる。 一方、 401 戸〜 1,000 戸も檀家をかかえる寺院が、 3割近くも占め、 宗勢調査値 (約1割) よりもかなり高い比率である。 同時に、 50 戸以下の寺院も 26 % (宗勢調査値では 31.9 %) もあることを考え合わせると、 大きな寺院と小さな寺院との格差が際立っているのがひとつの特徴といえよう。
6. 檀信徒の増減 [U−(2)−c]
檀信徒の増減を見ると、 本調査では 61 %が 「増加傾向にある」 と答え、 13 %が 「減少傾向にある」 と答え、 26 %が 「変化なし」 との回答であった。
まず増加傾向では、 宗勢調査値は檀家は 53.2 %、 信徒は 43.5 %である。 檀家と信徒の区別はないが、 本調査の 61 %増加傾向という数値は、 かなり高いといえる。 また減少傾向にある寺院の比率は高いが、 その実数は3カ寺で、 それぞれが立地条件の悪さ、 後継者不安などの問題を抱えている。 この点を考慮すれば、 札幌市全般では人口が増加する都市型の檀信徒増加傾向の地域といえる。 しかし、 その実態は 「檀信徒の出入りが多い」 という調査中に聞かれた声に象徴されるように、 その定着率の低さは何を意味するのか、 大きな問題といえる。
7. 行事への参加状況 (施餓鬼会と御会式のみ) [V−W−b, d]
施餓鬼会への参加状況は、 4〜5割の参加が 36 % (宗勢調査値 20.5 %)、 6〜7割の参加が 30 % (宗勢調査値 25.1 %) となっており、 宗勢調査からみると参加率が高いことがうかがえる。
また、 御会式の参加状況も、 8割から9割の参加が 21 %も有り、 宗勢調査値の 12.0 %と比較すると高い参加率であることが理解される。
(3) アンケートの自由回答欄のまとめと考察
※設問の後ろの数字は、 アンケートの質問項目番号
《設問》 今後札幌市で日蓮宗が寺院数を増やしたり、 檀信徒数を増やしたりするにはどの様な方法が考えられますか。 [A−@−A]
<回答>
1. 計画的に布教拠点を確保することで檀信徒を増やす
@有力寺院が檀家を独占する傾向を改めて欲しい。
檀家を増やすとき、 本宗の他寺院の信徒を檀家にすると問題が起こるので注意が必要。 また、 有力寺院の檀家の多い地域で新寺を建立をしたり、 檀家を確保しようとすると何かと軋轢が生ずる。 こうした大きな有力寺院に檀家が集中する傾向を改め、 小さな寺院を増やせば檀家への配慮が行き届き、 さらに炭鉱で閉山した寺院の救済にもなる。 この為には宗門が人口集中する地を念頭に、 計画的に立案し指導してほしい。
A寺院数の少ない所でニーズに合った形で土地・建物を確保していく。
都市では納骨堂の希望が多いのでその整備拡充をはかったり、 儀式を行なう施設を充実させることで檀家を増やす可能性は十分ある。 しかしそのための土地の確保が困難で、 寺院設立に適当な土地を得ることがネックとなっている。 一方で、 地価の高い都市で寺院を増やすことは困難である。 それよりも月回向をまめに行なって布教をすべきだ。 そのための拠点として、 まず市内寺院は郊外へ、 地方寺院が市内に別院や教会・結社として設置していくことを目標にすればいい。
2. 人口増加で可能性は十分あるのだから、 教師の熱心な努力が大切だ。
W人口増加で信仰を持たない人が多いから入信者を得ることは可能。 ことに若い人を中心に対話しながら法を説いていけばいい。 祈祷で寺と檀家は増える。
(5)教師の本分をつくして絶ゆまぬ努力と熱心な布教で寺檀を増やすことは可能。 私は、 老僧だが信徒は増えている。 正法を流布するにためらいは不要。
<まとめ>
以上のように回答は、 精神論と具体論の二つに大きく別れた。 精神論派には概して老僧が多いようで、 これまでの実績に自負を持たれた意見と思われる。 しかし、 現実には意欲はあっても地価の高騰、 有力寺院との関わり等の問題に若い教師は悩んでいる。 精神論を基礎に具体的方策が考えられている状況なら理想的なのだが、 実態は現実論と精神論が対立しているように見受けられる。 その打開を宗門の指導性に求めているが……。
《設問》 一般に若い人がお寺に来ることが少ない状況ですが、 あなたのお寺ではそのために何かなさっていますか、 あるいは考えていますか、 お聞かせ下さい。 [C−(6)]
<回答>
1. 伝統に固執せず新しいスタイルを考えるべきだ。
家族での参詣を呼びかけ、 昼食の供養やともに回向するなどして、 喜んでもらえるように勧めている。 また、 葬儀や法事にイスを用意したり、 行事を休日にするなどして、 若者に配慮した形を考えている。 さらに、 若者向けに青年会を作り、 行事などで働いてもらったり、 毎月の仏教勉強会などを開いて、 若者に呼びかけている。
一方、 提案としては、 子供の信育道場や寺子屋・信行会・写生の会などを開き、 寺院を一般に開放して、 若者向けの集う機会を増やしてはどうか。 伝統仏教には組織的に大規模な華やかさがなく、 檀家以外に対する大きなイベントもない。 それに加えて寺院の体質的な古さなどが災いして、 若い人が寺に集まらない。 そこで、 組寺内などで青少年に対する信行会などを企画したり、 寺を使って何かを行うなど組織的に対処してはどうか。
総じて、 伝統に固執せず、 寺を一般に開放し、 若者向けの各種行事を若者に配慮した形 (イス席や休日に行うなど) で、 しかも、 若者主体に組織的に行えば、 若い人は集まるのではないだろうか。
2. 伝統から信は生ず。
墓地や納骨堂がなくても、 祈祷を中心に行うことで若者は多く来る。 また、 法要の厳粛さや心ある回向文と法話、 寺院建築の荘厳さや音響を考慮することにより人は集まる。 つまり、 祈祷や法要、 法話など、 従来からある伝統的なものを、 きちっと真面目に行えば若者も集まる。
3. 住職の人柄で若者は集まる。
住職の接し方や人柄により、 寺と檀家との信頼関係ができ、 若い人も親に連れられ寺に来るので心配していない。 また、 すでに若い人も寺に来るので心配はなく、 特に方法は考えていない。
4. でも若い人は来ない。
若い人に対し、 寺の行事に参加してもらうように呼びかけてはいるが、 遊ぶ方が先などの理由で、 実際に寺に来てもらうことは難しい。
<まとめ>
以上のことから、 若者側に立って若者に合わす形で、 新しい布教の方策を模索する必要性は感じつつも、 これといった方策はなく、 思案中との回答が多い。 それに対し、 従来どおりのことを真面目にきちっと行っていない結果が、 現状のような若者の寺離れなのだとの指摘もある。 一方で現状を楽観している回答もあった。 伝統的な布教活動や住職の人柄、 または、 新しいスタイルにより、 若い人が寺院に来るはずと考えてはいるもののそれらのことすら積極的には行っていないという現状か。
《設問》 今後の寺院運営の悩みと問題点をお聞かせ下さい。 [W−(7)]
<回答>
1. 信仰の相続が確実に行なわれない傾向が強く、 将来檀信徒の減少が予想される。
核家族化した家庭が増えているので、 昔のように親から子への信仰の相続がうまくいかない。 中でも子供がいなかったり、 施主が女性だったりすると供養の責任を負うという自覚がないなどの苦労がある。 核家族化は家が続かないことを意味し、 さらに都市中心部では人口減少による過疎化すらおきている。
こうした核家族世帯は、 墓地を民間霊園に求める傾向があり、 霊園事業者の方針もあるのか、 お盆ですら寺に来ない人達が多くなってきているようだ。 同時に、 こうした家庭は共働きが多く、 月回向に伺うにも時間の制約があるなど、 寺との関わりが弱まって将来は不安である。
こうした状況の中で、 これまでのように行事のときだけではなく、 それ以外のときにも檀信徒が集まって来る寺づくりを考えていく必要がある。 例えば寺院運営そのものを現代的なシステムにしていくとか、 対社会的な福祉活動を行なってマスコミ利用で拡大していくとか。 しかし、 現実には広大な境内地を有し、 種々考えてはいるが、 時代の流れが早すぎてどう布教していいのか。 これが一番の悩みだ。
2. 檀信徒の教化をしていくためには、 後継者・人手及び施設が不十分。
納骨堂が、 狭くて小さいことが悩み。 土地が狭いので、 もう少し土地が欲しい。
現在地は設立者 (故人) の名義となっており、 その上山林の行き止まりの地でどうしたらいいものか。
檀信徒が、 増加すると信行指導が行いにくくなる。 人手不足が悩み。 住職後継者がいないことで入信する人が減少している。 若い人材の後継者がほしい。
<まとめ>
大別して、 以上の二点に寺院運営の悩みは集約される。 人々の寺離れの背景には、 都市化・核家族化・民間霊園の増加により人々の寺院への期待感が弱まったことなどが社会的要因として考えられる。 しかし、 一方で寺院側の要因も否定できない。 例えば、 新興宗教との関わりで言えば、 「知らぬ間に檀信徒に浸透している実態を葬儀当日まで気づかなかった」 という悩みを持つ寺院もあった。 これをみても人々に信仰心がなくなった訳ではなく、 社会の変化に寺院の側の対応が遅れていることがうかがえる。 その直接の原因が、 寺院の人材不足・土地不足にあるとは思えない。
また、 「自坊には寺院運営の悩みは特にない」 という回答もいくつかあった。 社会の大きな変化の中にあって、 これらの回答は日頃の布教努力の成果であろう。 今後は、 こうした寺院から困っている他の寺院に、 その方策を伝授する寺院間協力が宗門興隆の為にも必要と考えられる。 しかし、 檀家数の多い大寺院ゆえ、 その経済力で運営上の悩みを解決しているならば、 個々の檀信徒の心の変化に細かく対応できているか、 常に自己を省みる姿勢を忘れてはならないであろう。
《設問》 今後の宗門、 ことに若い僧への期待・提言をお聞かせ下さい。
[−]
<回答>
1. 若い僧は自覚をもって檀信徒を教化すべきだ
最近の若い僧は、 行ができてないのではないか。 唱題は難行であると認識し、 行をもっと厳しく受け止め行ってもらいたい。 そして、 僧として、 能化としての自覚を持ち、 少欲知足たるべき生活態度と地道な布教態度を忘れないでほしい。 また、 若い僧自身が、 より深い信仰を求める心を持つことが大切で、 法華経の行者としての使命観・目的観・世界観を確立する必要がある。 一方、 育てる側としては 『弟子は寺の使用人ではなく、 仏様から預かっている人間なので、 質の良い養育をしなければならない』 という認識が必要であり、 学歴中心ではなく、 宗教家としての人格・人間性を育てていく必要がある。 つまり若い僧にとって一番大切なことは自分自身が信仰を深め、 日蓮聖人の弟子としてその心を受け継ぎ、 僧としての自覚を持ち、 行学の二道に励むことが大切である。 そして、 縁有って檀信徒となった人々を大切にして布教教化していくべきである。
2. 青年僧は宗門全体・社会全体に視野を向けろ
僧侶本来の存在理由である 「法を弘める」 ということを忘れて、 お経の宅配や御布施の集金係りなど、 儀式の形ばかりを追求する単なる法務遂行者とならないよう注意しなければならない。 また、 自坊の護持のみにとらわれることなく、 宗門行政への積極的な参加や新寺建立などの新たな布教拠点の確保など、 宗門全体・社会全体と関わりあいを持ち視野を広く持ってもらいたい。 そして、 そのように法を弘める時には、 必ず、 仏祖諸天善神の御加護があることを肝に命じてほしい。
3. 宗門行政は柔軟に
都市部の大きな寺院が、 檀家の親戚までもを檀家として取り込むなど縄張り意識を持っている。 その縄張り意識の中に小さな寺が新寺建立などすると、 それだけで圧力をかけられ大変な思いをする。 宗門には、 その様な弱小寺院の現状や悩みなどを受け入れ解決する機関を設置してもらいたい。 また、 青年僧が後顧の憂いなく布教活動できるような援助体制を確立すべきであり、 課金としてでも強制加入させるような積極的な行政が望まれている。 この様に、 宗門の人材に対してのフォローアップ態勢の確立が望まれている一方で、 別院の開設や新寺建立の時の手続きの繁雑さ、 役所的対処の仕方に対しても改善を望む声がある。 総じて、 規定を杓子定規に運用するのではなく、 人間味溢れた血の通った柔軟な宗門行政が望まれている。 この事は対外的な面でも指摘されている。 つまり、 『世間の出来事に対して、 もっとタイムリーに対処してもらいたい』 というのがそれである。 しかし、 現在の宗門行政は、 形骸化・マンネリ化しており、 過去、 このようなアンケートをとっても行政に反映されたためしがないので、 アンケートは意味がないという痛烈な指摘もある。
<まとめ>
以上の3つを集約すると、 杓子定規な宗門行政や法務を形ばかりで考えている僧侶は否定され、 僧侶として慈悲心に満ちた人間が求められている。 つまり自分自身が信仰を深め、 日蓮聖人の弟子としてその心を受け継ぎ、 僧としての自覚を持つことが大切であるという意見になる。
最後に 「若い僧侶の養育期間が充実しているので心配ない」 という、 どこにも属さない意見が一つだけあったことを付け加えておく。
おわりに
都市寺院の調査は、 「はじめに」 の中で述べた通り、 新たな開教の可能性を探ることをテーマに、 「大都市」 に視点を置き、 その中での宗教問題全般と、 本宗寺院の現状を調査した。 今回の中間報告は、 第2次調査である平成5年9月2、 3日の両日にかけて、 札幌市内23カ寺に、 配布したアンケートの回収と聞き取り調査を基本データとし、 分析と考察を試みたものである。 その他今回の調査の特色は、 本宗寺院以外の諸教団、 葬儀社、 霊園に調査範囲を広げた点に見られる。
プロジェクトでは、 現在第1次調査のデータ整理を継続しているが、 これを進めることにより宗門を取り巻く社会の現状と、 未来へ向けての宗門・寺院・教師の指針を示すことになれば幸いである。
最後に、 本調査において、 北海道西部宗務所長をはじめ、 札幌市内寺院各聖、 また関係者の方々に快く調査の意義をご理解、 ご協力いただいたことに心より感謝の意を表します。











