日蓮宗 現代宗教研究所
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宗報 平成22年4月号 第265号 改訂 第97号

現宗研だより
  教化学研究集会のこと(二)
日蓮宗現代宗教研究所主任 髙佐宣長 

 
  初期の教化学研究集会
 
 昭和五十六年六月に、宗務院で、第一回目の教化学研究集会が開催された際の、石川教張主任(当時)の発言について触れました。
現代社会に対応する教化研究を推進させるため、教化事例と体験を踏まえながら、ひとつ教化の内容と方策を明らかにしてゆく「教化学」の研究が必要であること。
今まで積み重ねられてきた教研会議の成果を集約しつつ、現在取り組まれている布教教化の内容を明示し、教化の体系化を図ることをめざすべきこと。
教化に関する事例体験の交流を一歩すすめて、教化の内容・課題・方策を理論的に解明し、集約することによって、実践的な方向を打ち出す必要があること。
などの点について述べられていましたが、現宗研として、そのような教化の方向を打ち出す集会として企画されたのが、教化学研究集会である、ということであったわけです。

 そして、石川主任は、前回の引用に続けて、次のように言っています。
    この「教化学研究集会」を開いてゆくことが、日蓮宗の研究機関である現宗研の基本的な任務を具体化するものであるということです。
 つまりは、教化学研究集会というのは、信行および教化の理論方策を体系的にまとめて、それを提示して行く、現宗研の研究成果の発表の場として企画された、ということであり、それを開催し続けて行くことが、現宗研の責務であると認識されていた、ということになりそうです。
 実際、前述の通り、昭和五十六年六月に第一回が開催され、昭和五十八年五月に第二回が、これも宗務院で開催されました。
 昭和五十九年三月に第三回が大阪雲雷寺で開催され、以後、平成三年三月の第十六回まで、ほぼ、宗務院と雲雷寺とを交互に会場とするようにして、開催が続けられました。
 昭和六十三年度は二回開催されており、二度目は、大田区民会館で開催されましたが(大田区民会館が会場になったのは、この一回限りで、例外的なもののようです。前後の回が雲雷寺で開催されているところをみると、宗務院で開く予定であったものに、何か不都合なりが生じたものかもしれません)、現在の古河伝道部長(当時現宗研研究員)が「安楽死問題と日蓮宗教化」というタイトルで研究発表されたり、事例発表として、沖縄法華寺の主任であった鹿糠堯順師が「沖縄の宗教事情と青少年教化」という発表をされたりしています(残念ながら、古河研究員の発表については、「現代宗教研究」誌にもその詳細は記録されておりませんが、鹿糠師の発表については、平成元年三月の第二十三号に、要旨が掲載されています)。
 
  平成期の教化学研究集会
 
 さて、平成三年三月に雲雷寺で開催されて以降、教化学研究集会は、平成九年二月に雲雷寺で開催されたのを例外として、宗務院でも雲雷寺でも聞かれておりません。そして、この頃から、現宗研のメンバー(所長・主任・研究員・顧問・嘱託)以外の方、或いはまた、宗外の方の発表が増えて参ります。
 そして、やはりこの頃から、いずれかの管区開催という形態を取るようになった模様です。
 そして、平成八年五月の第二十七回から平成十八年の第四十回までは、二、三の例外を除いて、現宗研メンバーではない方や宗外の方の講演が中心になって来るようです。
 とは申せ、概ね「現代宗教研究」誌の「教化学研究」というコーナーに講演録等が掲載されて来ており、いずれも教化上の貴重な資料ですので、是非、御参照頂ければと存じます(もし、お手元に所報が見付からなくとも、現宗研のウェブサイトで読めるようになっております http://www.genshu.gr.jp/)。
 平成十六年八月の第三十七回から、平成十八年の第四十回までは、四回続けて庵谷行亨先生に御講義を頂いており、平成十九年三月刊行の「現宗研」第四十一号の伊藤立教主任の「編集後記」には、「▼教化学研究集会は、現場教師からの要請に応えて、庵谷行亨師が鋭意取り組んでくださいました。」とあります。

 そうです。賢明なる諸兄の御賢察の通り、ここで主任が交代を致しまして、伊藤師から筆者となりました。
 筆者は、中央教研や教団論セミナーなど、現宗研主催の研修会の類にも、それなりに参加して来てはおりましたものの、前回書きました通り、主任となりましてからも、この「教化学研究集会」については、ほとんど認識がなかったような状態であったこともあり、平成十九年度は、教化学研究集会が開催されないままに、月日が経過して行きました…。
 
  近年の教化学研究集会
 
 確か、この年も秋から冬に移行しようとしていたころかと思います、主任を勇退された後、現宗研の顧問に御就任頂いている伊藤立教師から、今年度の教化学研究集会はどうなっているか、という、お問い合わせを頂戴したのでした。
 現宗研のこれまでの活動を把捉すべく、折りに触れて「現代宗教研究」のバックナンバーを眺めたりはしていたのですが、教化学研究集会については、きちんと認知していなかった筆者は、些か慌てました。
 伊藤師から、大凡前回記しましたような、教化学研究集会の性格付け、位置づけについての御説明を頂き、開催して頂ける管区はないかと、先ずは自分の所属管区に相談をしました。
 筆者の所属が東京東部であることは、本欄に書いたことがありましたでしょうか。ともあれ、東京東部管内では、関東大震災、東京大空襲で大きな被害を受け、全山烏有に帰したことのある寺院も多い土地柄から、宗門に大規模災害救援対策規程が設けられ、ことに管区に災害対策支部を設置するようになって以来、防災に大変関心が高くなっています。
 そこで、防災をテーマに救化学研究集会を開催して頂くこととなり、工学院大学の宮澤健二教授に「寺院建築は大地震に耐えられるか?」、NPO法人EARTH理事長の石原顕正師(山梨県立本寺住職)に「寺院と防災〜いま地震がおこったら〜」と題して講演を頂き、さらに、両講師の指導を得ながら、グループ討議をしました(聴講にとどまらず、グループ討議というところまで来ますと、もはや教化学研究集会というよりは、管区教研会議と言っても可かったかもしれません。なお、発行が遅れていて申し訳ありませんが、この講演録は、次の「現代宗教研究」に掲載の予定です。阪神大震災より十五年という今年、有意義な資料となろうかと思いますので、御期待下さい)。

 平成二十年度は、静岡東部と東京北部で開催されましたが、東京北部では、当欄で以前書きました「典礼権」の話を、筆者がさせて頂きました。
 平成二十一年度は、五月に北海道南部で、八月に静岡中部で開催されました。北海道では、やはり筆者が「現代社会に『立正安国論』を活かすには」というタイトルで、静岡では、長谷川正浩師が「宗教法人の公益性を考える」のタイトルで講演をされました。
 長谷川師は、現宗研のメンバーでは御座いませんが、公益性の問題は、現宗研としましても、平成二十年の二月に、まさに「宗教法人の公益性を考える」のタイトルで、長谷川師と東京大学の島薗進教授を講師にお迎えして、教団論セミナーを開催したところでも御座いました。また、先の東京東部での講師の石原師は、現宗研の嘱託として、防災と危機管理の教化学的研究に取り組んで頂いている方でもあります。そうした意味では、このところの教化学研究集会は、当初の目論見でありました、現宗研の研究成果を御報告する場としての性格を、多少は取り戻しつつある、と申し上げると言い過ぎでしょうか。
 筆者が講師を務めさせて頂いているようでは、「信行および教化の理論方策を体系的にまとめて、それを提示」するという域にまで達するのは、些かならず難しいかもしれませんけれども……。
 
  教化学研究集会のこれから
 
 少々内輪話になりますが、平成二十二年度の予算案を立てる過程で、財務担当の方々と折衝を致しました際に、米田財務部長より、所報の活用法を工夫するように、という御指示を賜りました。
 「現代宗教研究」をテキストとするような形での、管区単位などでの研修会のようなものを現宗研で企画してはどうか、という御提案で御座いました。
 筆者は、教化学研究集会のことをお話しし、所報をテキストとする、ということにはなっていないまでも、そうした研修の成果を所報に記録している旨の御説明を申し上げたのですが、米田部長は、教化学研究集会については認識が不足していた、そうした活動は大いに展開して行くように、と激励して下さいました。
 些か手前味噌な、本来オフレコであろうような話をこうして記してしまうのは、ルール違反かもしれませんが、教化学研究集会のこれからを考えるに際し、是非書き残しておきたいと思います。

 さきほど、東京東部の教化学研究集会が、言わば管区教研会議であったと申しました。そして、前回、出来得れば、管区単位での教研会議を開催して行きたいという、現宗研の考え方について申し上げましたが、実は、管区単位での教研会議というのも、実際には既に開催されております。
 大阪市管区の教研会議がそれで、平成二十年六月に第一回が、翌二十一年九月に第二回が、それぞれ大阪府社会福祉会館を会場に開催されました。
 第一回は、「あなたのお寺は大丈夫?」をテーマとして、大阪市宗務所の伝道担当事務長である松井英光師が「寺院を取り囲む諸問題」として、所謂「三離れ」等についての問題提起をされ、それに引き続き二時間(!)の全体会議、というプログラムでした。
 また、第二回は、「システムとしての寺院−法華信仰の絆」をテーマに、中尾堯文立正大名誉教授による「京都町衆と法華信仰」という基調講演、休憩を挟んで一時間の全体会議、という構成でした。
 いずれも、当時の田澤現宗研所長が助言者として出席されました。

 雲雷寺が、初期の教化学研究集会の会場となってきたことなど、この地区は、教化学に対し、高い関心を持って頂いているようですが、ひとり大阪のみならず、多くの管区に、競って、教研会議とまでは申しませんけれども、教化学研究集会を開催して頂けるようになれば、と念ずる次第です。
 現宗研の昨年の所長会議での現況報告から、もう一度引用致します。
    必要や御要望により、教区や管区で開催しています。現宗研より、相応の助成をさせて頂いております。
 相応の助成、と申しますのは、参加予定人数などを勘案させて頂きながら、御相談させて頂いております。
 開催の御要望をお待ちしております。
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