日蓮宗 現代宗教研究所
Nichiren Buddhism Modern Religious Institute
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宗報 平成21年8月号 第257号 改訂 第89号

現宗研だより
  教団付置研究所懇話会と脳死臓器移植法(その一)
日蓮宗現代宗教研究所主任 髙佐宣長 

 
  脳死臓器移植法の見直し
 
 暫し御無沙汰を致しました。
 田澤所長の京浜教研での講演「今『いのち』を考えるとは」の連載のため、当「現宗研だより」を休載させて頂いておりました。
 平成二十年度の京浜教研は、筆者の地元、東京東部が年番管区であったため、筆者も企画段階から多少関わりました。そして、テーマは宗門運動のスローガンとも係わるものでしたし、基調講演を田澤所長にお願いしたことでもありましたので、筆者からお願いして、「現宗研だより特別編」のような形で、講演録を掲載して頂くこととしたのでした。
 決して、田澤所長に原稿を書いて頂いて、筆者は楽をしようなどとしたワケでは御座いませんので、御海容下さいませ。

 さて、今回の「現宗研だより」は、まだ記憶に新しい、脳死臓器移植法の見直しについて書いてみたいと思います(法律の正式な名称は「臓器の移植に関する法律」であり、一般には、「臓器移植法」と呼ばれておりますが、筆者は、この法律に於ける「脳死を人の死とする」という点に、特に疑義を待っており、また、後述するように、教団付置研究所懇話会でのこの問題への取り組みも、脳死問題に集中することとなりましたので、脳死臓器移植法と表記することと致します)。
 と申しましても、「現宗研の時事ノート」を復活させるというのではなく、あくまで、現宗研の活動内容を御紹介御報告する「現宗研だより」の一環としたいと思いますけれども…。

 平成二十一年七月十三日、孟蘭盆の棚経に歩いていた筆者の携帯電話に、日本人の死生観を研究している知人から、脳死臓器移植法改正案A案の可決を報せてくれるメールが入りました。
 知人のメールには、A案可決への失望と忿怒の言葉が添えられていました。
 筆者は、「そうでしたか。修正案が先に採決されるということでしたので、期待していたんですが…。」と返信しました。
 勿論、衆議院で六月十八日に可決した脳死臓器移植法改正A案が、参議院でそのまま可決され、法案が成立したことを意味することは、皆さん御承知の通りです。
 
  参議院院内集会
 
 この五日前の七月八日、筆者は、教団付置研究所懇話会のメンバーとともに、参議院の議員会館におりました。
 「『臓器移植法』改悪に反対する市民ネットワーク」の開催する、緊急院内集会に仏教・キリスト教・新宗教の八団体からの参加者が集い、それぞれの教団からの見解表明をすることになっていたからです。
 この集会は、次のように呼び掛けられたものでした。

  
第十五回臓器移植法改定を考える緊急院内集会
 日時:七月八日(水)十一時〜十三時
 会場:参議院議員会館第六会議室
 ―宗教界からの緊急提言―
 「脳死は人の死ではない」
 (1)見解発表(五十音順)
    「大本」「浄土宗」「浄土真宗本願寺派(西本願寺)」「真宗大谷派(東本願寺)」「天台宗」「日蓮宗」「立正佼成会」
*その他、「キリスト教」からの発表も調整中。
 (2)見解紹介
    「曹洞宗」「日本宗教連盟」
 (3)出席議員からの挨拶、参加者からの発言
 七月十日参議院本会議での「臓器移植法改定案」の採決が取りざたされています。参議院での審議はまだ始まったばかりです。衆議院ではたった八時間でした。区切られた期間で、いったいどれだけの審議ができるというのでしょうか?人の生と死に関わる重要な問題を解散総選挙と絡めて政治的に扱ってはなりません。じっくり腰を落ち着けて審議するべきです。
 この事態に、宗教界の七団体が一同に会し「脳死は人の死ではない」と緊急提言を行います。
 直前のお知らせではございますが、七月八日の院内集会にぜひご参集ください。
 主催:「臓器移植法」改悪に反対する市民ネットワーク
(因みに、右の案内は、生存学研究センターという組織のウェブサイトに、「臓器移植・脳死」に関わる様々な発言や動きを纏めたページがあり、そこに掲載されています。http://www.arsvi.com/d/ot2009.htm#07081
 この集会は、阿部知子衆議院議員と川田龍平参議院議員の事務所が連絡先となって開かれたもので、同ネットワークの方々の他、十数名の国会議員の方々も出席されました。
 筆者は、こうした集会には初めて出席したのですが、議員各位は、入れ替わり立ち替わり出席し、挨拶してまた退席する、というようなスタイルの集いでした(川田議員は、ほぼ最初から最後まで参席していましたが)。議員各位の挨拶は、宗教界からの意見表明の合間を縫う形で行われたのですが、予想していたより出席議員数が多かったため、終了時刻は予定の十三時よりかなり遅れることとなりました。

 最終的に、当日参加したのは次の方々でした(順不同・敬称略)。
 今岡達雄・浄土宗総合研究所主任研究員
 爪田一壽・浄土真宗本願寺派教学伝道研究センター研究員(武蔵野大学専任講師)
 藤原正寿・真宗大谷派教学研究所所員
 村上興匡・天台宗総合研究センター研究員(大正大学准教授)
 篠崎友伸・立正佼成会中央学術研究所所長
 加藤眞三・大本「人類愛善会・生命倫理問題対策会議」顧問(慶應大学教授)
 土井健司・日本キリスト教協議会宗教研究所研究員(関西学院大学教授)
 この他、世話人格で、大本教学研鑽所の斎藤泰研鑽室室長が、この院内集会全体の進行役を務められました。
 こうした錚々たる方々に混じって、日蓮宗からということで筆者が加わったのですが、些かならず力量不足の感があったことは否めなかったかもしれません。

 マスコミ各社からも記者が参加しており、筆者が名刺交換をしただけでも、朝日新聞、読売新聞、産経新聞、日本経済新聞、東京新聞(中日新聞)の方々がおられました。
 問題の性格からか、社会部、科学部、医療グループの記者の方々、論説委員の方など、名刺の肩書きが様々であるのが、興味深く感ぜられます。
 
  マスコミの報道
 
 残念なことに、管見に入った限り、右記の新聞各紙に、この院内集会についての記事はなかったのですが、御時世と申しましょうか、インターネットのサイトYOMIURI ONLINE(ヨミウリ・オンライン)とasahi.com(アサヒ・コム)とには、報道がありましたので、次に掲げておきます(数字を漢数字に改めました)。

YOMIURI ONLINE
 十宗教団体、臓器移植法改正でA案に反対

    参院で審議中の臓器移植法改正案をめぐり、仏教やキリスト教などの十宗教団体は八日、脳死を「人の死」とすることを前提とするA案に反対する見解を発表した。
 見解を出したのは、浄土宗や日蓮宗などの各仏教宗派や、日本宗教連盟、日本キリスト教協議会、立正佼成会、大本など。いずれも、A案反対の理由に、〈一〉脳死を人の死とする社会的合意が十分得られていない〈二〉家族の同意だけで提供できるため、提供者本人の意思が必ずしも反映されない─などを挙げている。
 一方、A案を支持する移植関連の三学会六研究会と臓器移植患者団体連絡会は、既に今国会の採択を求める声明を発表している。
 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090708-OYT1T00785.htm
 
asahi.com
 日本宗教連盟、臓器移植法改正に反発 現行法を支持

    臓器移植法の改正論議をめぐり、日本宗教連盟(岡野聖法理事長)は八日、参院議員会館で開かれた勉強会で、「臓器移植の場合にのみ脳死を人の死と規定すべきだ」として、現行法を支持する姿勢を表明した。
 衆院で可決されたA案について、「脳死を人の死」を前提にしている点や、本人意思がなくても臓器を摘出できると規定している点に強く反発している。
「議論の進め方が性急過ぎる」として、第二次脳死臨調を設置して議論を深めるよう求めた。
 浄土宗、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、天台宗、日蓮宗、立正佼成会、大本、日本キリスト教協議会の代表者らが出席した。脳死を人の死とすることに対し、「社会的な合意が得られていない」という点で一致している。小児の脳死については、厳格な判定基準の導入や、虐待された子を対象としないためのシステムづくりを求めた。
 http://www.asahi.com/national/update/0708/TKY200907080277.html
 
 また、Yahoo! JAPANニュースには、かなり詳しい報道がなされています。長くなりすぎますので、引用は致しませんが、関心のある方は、閲覧してみて頂ければと思います。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090708-00000006-cbn-soci
 
 念のために申し添えれば、見解表明に於いて、A案に反対する、という表現をした教団はなかったのではないかと思います(筆者などは、後述致しますように、宗門の公式見解を紹介しつつも、自分は宗門を代表して見解を表明出来るような立場の者ではないので、公式見解以外の部分は個人的見解であると受け止めて欲しい旨を申し上げて発言して来たのですが)。
 アサヒ・コムの記事も、文書による見解を紹介した日本宗教連盟をりードにするというのは如何なものかと存じますし、こうした報道には、いろいろと注文を付けたくなるものですが、宗教界の動きを報じて貰ったことを以て善しとすべきでしょうか。
               〔続〕
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