日蓮宗 現代宗教研究所
Nichiren Buddhism Modern Religious Institute
HOME > 目次 > 時事ノート > 平成19年2月
宗報 平成19年2月号 第227号 改訂 第59号

初詣で・人口減少・国連加盟・歴史認識・教育基本法改正・防衛省発足・
臓器売買・全仏五〇年・崖っぷち犬・おれちん・阪神大震災と寅さん
日蓮宗現代宗教研究所主任 伊藤立教 

 初詣で
 
 警察庁がまとめた平成19年正月三ヶ日の神社・仏閣の初詣で者数は、昨年を422万人うわまわる9795万人(主催者発表)でした。
 全国ベストテンは、まる1明治神宮(東京・311万人)まる2成田山新勝寺(千葉・290万人)まる3川崎大師(神奈川・287万人)まる4伏見稲荷大社(京都・270万人)まる5熱田神宮(愛知・235万人)まる6鶴岡八幡宮(神奈川・234万人)まる17住吉大社(大阪・231万人)まる8浅草寺(東京・216万人)まる9太宰府天満宮(福岡・201万人)まる10大宮氷川神社(埼玉・200万人)でした。
 行楽地の人出は、東京ディズニーランド・ディズニーシー(千葉)が34万5千人で最多でした。
 
 人口減少
 
 初詣で者数は増えましたが、日本の人口は1億2779万人(平成16年、2004年)をピークに、確実に減っていくそうです。
 国立社会保障・人口問題研究所が昨年(平成18年)12月20日に発表した2055年までの将来推計人口は、2046年に一億入を割り、2055年には8993万人になるそうです。
 いまから48年後の2055年には、女性が生涯に生む子どもの数(合計特殊出生率)が1.26人となる見通しだからだそうです。ちなみに前回推計(平成14年)では1.39人と予測しており、大幅な低下予想に修正されました。今回の予測は、いまの出生や死亡の傾向が続くと仮定し、出生率や女性の非婚化傾向が予想以上に進んでいることによるそうです。昨年の出生数が増加して出生率が1.29人にあがったのは、一時的な現象とみています。
 これに対して高齢者の死亡率は下がり、2055年時点の平均寿命は、男性83.67歳(平成17年は79.53歳)、女性は90.34歳(平成17年は85.49歳)となって、高齢化が進みます。65歳以上が人口に占める高齢化率は、いまの倍の40.5パーセントになるそうです。
 このまま少子高齢化が進めば、政府が平成16年の年金改革で約束した、現役時代の収入の五割以上の年金給付、は困難になるかもしれません。世代間の支え合いで成り立つ年金などの社会保障制度が揺らぎ、負担の大幅増加と年金額削減、労働力人口減少による経済停滞などが起こりそうです。
 生みたくても生めない社会、がみえます。戦後最長の景気回復傾向にあると政府が発表している一方で、ワーキングプワー、働いても働いても生活の安定が得られない低所得者が増えています。正社員採用が減り、非常勤雇用が増えています。仕事と家庭を両立できる状況にないのですから、たとえ結婚しても、子どもを持つことができない、持てても一人が精一杯、というのが現状です。
 衣食住、というように、着るものを着て、食べるものを食べて、安全な住まいに落ち着いて、はじめて安定した生活ができます。収入が不安定で、転職転住の不安を抱えていては、結婚・出産・子育てどころではありません。日本の社会の二極化か進んでいる、と言われている現状が、少子化の社会的要因のひとつと思われてなりません。
 
 国連加盟
 
 50年前の昭和31(1956)年12月18日、日本の国際連合(国連)加盟が、77ヶ国の全会一致で承認されました。国連本部で挨拶に立った重光葵外務大臣は、日本国憲法の前文を読み上げた後、この信条は国連憲章と完全に合致するものである、と語りました。
 新憲法で非武装の理念を明言した日本は、国の安全は国連を軸にした集団安全保障体制で守るという理想を手に入れました。が、現実は理想と違い、アメリカとの同盟で国を守る日米安全保障条約を結びました。
 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)問題に関する六ヵ国協議が、昨年(平成18年)12月18日、一年一ヶ月ぶりに再開されました。北朝鮮の核実験・核兵器開発問題を受けて、ようやく再開された会議ですが、具体的成果のないまま、次回の会議予定が決まらないまま閉会しました。
 この件については、国連での北朝鮮制裁決議で、金融面での措置や武器禁輪などの制裁を科すことになっています。
※六ヶ国協議は、本年(平成19年)2月8日再開の予定。(1月29日現在)
 
 歴史認識
 
 小泉前首相の靖国神社参拝で問題となった「歴史認識」について、昨年(平成18年)12月に、北京で日中歴史共同研究初会合が開催されました。平成20年に研究成果をまとめる予定だそうです。韓国とは、平成14年から共同研究がおこなわれ、平成17年6月に日韓双方の論文と批評文をまとめた報告書が公表されました。第二次日韓協約や韓国併合についての認識の差は埋まらず、双方の共通点と相違点を示す両論併記のかたちになりました。
 朝日新聞平成18年12月20日号朝刊特集記事「歴史と向き合う 第五部真実と和解」に、第二次世界大戦終結40周年の昭和60(1985)年に、西ドイツ国民に「過去を直視する」よう訴えたワイツゼッカー元西ドイツ大統領(ドイツ統一後の初代大統領) へのインタビュー内容が載っています。
 「ドイツの戦後は、隣国との和解とともに始まりました。(中略)ドイツがすべての隣国と友好関係にあるのは、史上初めてのことです」と語り、戦争加害を反省してきたドイツで最近、戦争被害が話題になっていることについて、「『被害』とは、個人的な体験で、それ自体は尊重されるべきことです。(中略)しかし、そうした個人の被害者としての苦悩をドイツが政治的に利用することは許されないと思います。私たちが侵略を始めたことは明白だからです」と語っています。
 ドイツ人自身が自分の国を見る視線は変化したか、現在のドイツ人はどのような愛国心を持っているか、という問いに対して、「冷戦期、分断国家のドイツ(西独)にとって、どのような愛国心を持つかということは、難しい問題でした。私たちは『憲法愛国主義』ともいうべきものを育てました。憲法であるボン基本法がうたう民主主義の理念が、私たちの愛国心の表れだという考え方です。しかし、それは頭で考えたもので、心や感情に根ざす愛国心にまでは至りませんでした。それは再統一後にすこしずつ育ってきたと思います。06年のサッカーのワールドカップをドイツで主催し、愛国心が大いに盛り上がりました。これは、開かれた、平和的で、健全な愛国心だったと思います」「ただし、過剰な愛国心は健全ではありません。いまやEUの中で、国内総生産や人口でいうと、ドイツが最大の国家です。それで舞い上がってはいけない。そういう国だからこそ、小国の要求に心を開くべきなのです。特にポーランド、チェコ、バルト3国など、つらい過去の記憶を抱える国々に配盧すべきだと思います」と締めくくっています。
 以上のワイツゼッカー氏インタビューに対する解説として、「歴史における『加害』と『被害』の関係をどう考えるべきか。その両面があるときに和解はどう達成できるのか。(中略)ワイツゼッカー氏は、ドイツの加害と被害は『比較できない』と明快だ。すべてはドイツが戦争を始めたことが原因だからだ。国家による犯罪と、戦争の結果個人が受けた被害を峻別すべきだと説く」とし、「注目すべきことに、ドイツの被害の問題を多国間の対話の中で話し合おうとする試みが、両国の政治家や知識人の間で動き出している。一国だけによる過去の検証は、狭いナショナリズムに陥りやすい。(中略)有識者の共同研究から若者同士の交流に至るまで、多層的な、多角的な粘り強い対話の積み重ねがあってこそ、和解は進む」と、記者は締めくくっています。
 いま、
   太田光・中沢新一共著『憲法九条を世界遺産に』(集英社新書・2006年8月17日集英社発行)
 姜尚中著『愛国の作法』(朝日新書・2006年10月30日朝日新聞社発行)
が注目されています。
 
 教育基本法改正・防衛省発足
 
 昨年(平成18年)末に閉会した臨時国会は、政府提出法案をすべて成立させました。なかでも安倍晋三首相が最優先法案とした改正教育基本法が、連立与党(自民党・公明党)の単独採決で成立したほか、防衛庁を「省」とし、自衛隊海外派遣を本来任務に格上げする法案が、連立与党と野党民主党などの賛成多数で可決成立しました。
 改正教育基本法は、いわゆる「愛国心条項」や「教育振興基本計画」が盛り込まれ、これも新設の「教育再生会議」と連動して、教育に対する施策がおこなわれることになりました。
 教育に関する歴史として、明治22(1889)年の大日本帝国憲法発布、翌23年の教育勅語発布、敗戦後の昭和21(1946)年の日本国憲法公布、翌22年の教育基本法施行、があります。
 教育勅語(教育に関する勅語)は、「我カ臣民、克ク忠ニ、克ク孝ニ、億兆心ヲ一ニシテ、世世晰ヲ済済ルハ、此レ我が國ノノ精華ニシテ、教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス」と、国民は天皇の臣下であるとの前提に立って発布されました。
 これに対して教育基本法は、前文に「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」とうたい、11条を明記しています。とくに第9条(宗教教育)は、「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。A国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」と定めています。教育基本法は「教育の憲法」と言われ、主権在民の前提に立っています。
 改正教育基本法は、前文に「公共の精神を尊び」を書き加え、「ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する」とうたい、18条を明記しています。宗教教育に関しては第15条に、「1宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。2国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」と定め、教育基本法とほとんど変わりありません。
 安倍首相直属の「教育再生会議」が本年(平成19年)1月下旬にまとめる第一次報告原案が、昨年12月16日に明らかになりました。(1)基本をおさえ、学力向上─補習を行う「土曜スクール」を実施等 (2)いじめを許さない、安心な教室─安心して学べる規律ある教室にする等 (3)恩師に出会える学校─教員免許更新制を導入する等 (4)責任ある学校、教育委員会─副校長、主幹の職を新設等 (5)「社会総がかり」で教育再生─まる1地域社会に望むこと─地域全体で子供を育てましょう まる2家庭に望むこと─原点は家庭。子供にしっかりしつけをしましょう(都道府県の「家庭の日」を活用、先祖や子孫を含む家族、生命の継承の尊さを感じ合う) まる3企業に望むこと─企業は、子供の生活に責任を持ちましょう(育児・保育・教育に活用できる有給休暇制度等を改善・充実)、としています。
 防衛庁は、本年(平成19年)1月9日に防衛省に昇格しました。
 昇格により、久間防衛庁長官が初代の主任大臣に任命されましたが、首相が自衛隊の最高指揮官であることには変わりはありません。防衛省が内開府の外局から独立したため、内閣への閣議開催要求や財務省への予算要求を、内開府を通さずにできるようになりました。
 政府の「国家安全保障に閣する官邸機能強化会議」(議長・安倍首相)が新設を検討している「日本版NSC(国家安全保障会議)」の概要が固まった、と塩崎官房長官が1月10日の都内講演で明言、日本版NSC関連法案を1月25日からの通常国会に提出する方針だそうです。
 その内容は、(1)外交・安全保障の長期的な戦略の策定 (2)有事や大規模災害などの緊急事態への対応、を担う組織として、首相が議長となり、官房長官・外相・防衛相を中核メンバーとする閣僚会議を設置するというものです。
 
 臓器売買
 
 「宗報」平成18年12月号に載せた臓器移植問題に関する裁判が、昨年(平成18年)12月26日に結審しました。
 愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院での生体腎移植について、腎臓提供の見返りに金品を贈与したとして、臓器移植法(臓器売買等の禁止)違反の罪に問われた同市水産会社男性役員(59)と同社女性社長(60)に対する松山地裁宇和島支部判決は、それぞれに懲役1年執行猶予3年(いずれも求刑懲役1年)でした。
 判決によると、内縁関係の二被告は、知人の松山市内の貸しビル業の女性(59)に、重い腎臓病の男性役員に腎臓を提供するよう依頼、女性が承諾して移植手術を受け、謝礼として現金30万円と新車乗用車(150万円相当)を渡したそうです。
 この移植手術を執刀した同病院万波誠泌尿器科部長について判決は、事件との関わりには触れていません。
 全国初の摘発となった臓器売買事件で、二被告はいずれも起訴事実を認め、公判は一回で結審しました。
 腎臓を提供した女性は、すでに罰金100万円の略式命令を受けています。
 
 全仏50年
 
 財団法人全日本仏教会(全仏)が、結成されて50年の節目に当たります。結成当初に期待された「全一仏教運動」関連記述が、機関紙「全仏」525号(平成19年1月発行)の池田行信事務総長稿「NEXT50に向けて」にありますので、抜粋紹介します。
 「全日本仏教会は全国の58の諸宗派(教団)、36の都道府県仏教会、9つの各種仏教団体が加盟する、わが国における伝統仏教界を代表する唯一の連合体です。また、教派神道連合会、日本キリスト教連合会、神社本庁、新日本宗教団体連合会と共に、財団法人日本宗教連盟を構成し、仏教界を代表して他宗教との連絡や政官界との折衝にも当たっています。さらに、世界146地域センターが加盟している世界仏教徒連盟(WFB)に唯一の日本センターとして加盟し、仏教界の窓口になっています。本会の寄付行為の第4条『目的』には、『この法人は、仏陀の和の精神を基調とし、相互の緊密な連絡提携のもと、全国の各種仏教運動に全一性と計画性をもたせ、真に時代に即応する活発な全一仏教運動の展開と仏教による国際文化の交流を促進し、もって、仏教文化の宣揚と世界平和の進展に寄与することを目的とする』とあります。『仏陀の和の精神』を基調とした『国際文化の交流』『仏教文化の宣揚』『世界平和の進展』については、ご理解をいただいていることと思います。しかし、今日、『全国の各種仏教運動に全一性と計画性をもたせ、真に時代に即応する活発な全一仏教運動の展開』に、いくつかの問題があります。その問題の一つは、財団創立50年を迎えた今日、結成当初の『全一仏教運動』の内容が不明確になっていることです。」
 「結成当初、『全一仏教運動』に期待されたのは、『世界伝道』へ向けた『国内仏教の一層の結集と躍進』でした。」
 「そして新たに財団法人として再出発するにあたって、全日本仏教会へ期待されたのは、『各宗各派、地区仏教会、僧俗各団体が縦横に一致協力して国の内外に仏教を推進すること』(『主張 過去を顧み今後に望む 全日仏再発足に際し』『全仏通信』第218号、昭和32年6月25日)でした。まさに、ここに当初の『全一仏教運動』への願いが知られます。」
 「私はこれらの理念や組織・運営上の問題を解決する手がかりとして、『宗派仏教』の再解釈が要請されていると思います。すなわち、日本の仏教は現実的には『宗派仏教』としてあり、自分の所属する宗派こそが唯一絶対的な教えと考える、いわば『わが仏のみ尊し』の傾向が強くあります。この『宗派仏教』『わが仏のみ尊し』のよさを保ちながら、どう『全一仏教』を創造していくかが課題です。その時、日本の仏教自体が滅んで、一宗派だけが残る道理はあり得ないことを考えれば、『宗派仏教』『わが仏のみ尊し』に安んじた仏教理解に止まっていてはいけないと思います。また、国際化がすすみ、キリスト教徒やイスラム教徒など、異宗教・異文化の他者とも互いに理解し連帯しあう『宗教間対話』や『異文化交』、さらに、『社会参加』や『国際協力』への要請に対して、『宗派仏教』『わが仏のみ尊し』の立場での対応には、自ずから限界があります。その意味において、『国内仏教の一層の結集と躍進』はもとより、仏教の『世界伝道』へ向けて、『性別』や『僧俗』、さらには『宗派』『国家』『民族』という枠をも超えて、仏教徒としてのアイデンティティを形成する、まさにボーダレスの時代を見据えたグローバルな『全一仏教』の創造が要請されています。」
 
 崖っぷち犬
 
 昨年(平成18年)11月22日、徳島県徳島市の眉山にある高さ50メートルの崖で動けなくなった野良犬が、11時間の救助作戦の来、助けられました。
 生後約7ヶ月の雌で、この犬の姉妹も一匹、この6日前に同じ崖で保護されていたそうです。
 現場の崖の近くの公園には、野良犬が10匹以上いることもあるそうです。
 徳島保健所が救助劇の後、現場近くで15匹の捨て犬を保護したのですが、すべて段ボールに入れられた子犬でした。
 救助劇の現場に、わざわざ子犬を捨てに来た人がいたわけです。
 同様の話は、猫でもあります。お寺の門前に捨てられた子猫がいたので、やむを得ずひきとって飼い始めたら、次から次へと捨て猫が置かれるようになった、という話をよく関きます。
 これらは、あきらかに飼い猫の子です。生まれた子猫を親猫から取り上げて捨ててしまう、その神経が分かりません。雌猫を飼ったら子を産むことは分かっているはず、生まれたら育てるのが当たり前、それが嫌なら避妊・去勢するのが飼い主の義務だと思います。
 子猫を引き取るはめになった側の困惑と迷惑を考えないとしたら、身勝手すぎます。
 徳島保健所の職員が、「あれだけ騒がれた後なのに、なぜ分かってくれないのか」と嘆いたそうです。
 その一方で、この助けられた野良犬を引き取りたいという申し出が、全国から100件あまり来ているそうです。関係者は、「あなたのお住まいの近くの施設にも、保護された犬はたくさんいます。その犬たちを助けて下さい。絶対この犬である必要はありません」と答えたそうです。
 保健所や飼い主から管理センターに持ち込まれた大は、早ければ7日で殺処分されます。平成16年度に全国の施設で殺処分された犬は、9万3985匹。引き取られるのは、一割にも満たないそうです。
 最近特に目立つ、いじめ自殺、ホームレス殺人、兄弟・夫婦・親子殺人など、弱者や親族がらみの犯罪と、訴えるすべのない犬猫への無慈悲な扱いは、現代社会の病弊と言えるでしょう。
※崖っぶち犬は、本年(平成19年)1月28日、希望者の抽選で、県内の主婦に引き取られました。
 
 おれちん
 
 〈昨年(平成18年)公開された映画「日本沈没」新作で、主人公は恋人の思いをかなえるために爆薬を持ち、命にかえて日本を沈没から救った。30年前の同映画前作では、主人公はあくまでも日本を救うために行動した。前作には「大きな社会の物語」があったのに、新作は「小さな自分の物語」に終始している。しかも、その自分の物語は世界に直結している〉という諸富祥彦・明治大学教授(カウンセリング心理学)の分析を紹介し、これも昨年映画化された漫画「デスノート」と、平成16年のベストセラー小説『世界の中心で、愛をさけぶ』も例に挙げ、朝日新聞平成19年1月17日付朝刊特集連載記事「モノサシ探し 文化の現場からまる6」で、新谷祐一記者は次の様に述べています。
   自己愛を膨らませ、共同体に対して閉じている。そんな人物のことを、小倉紀蔵・京都大助教授(東洋哲学)は「おれちん」と表現する。「おれさま」と「ぼくちん」の組み合わせだ。
 90年代以降の不況、社会の流動化、自己責任論の台頭などで、家庭、学校、地域や終身雇用の企業と、いわば同心円的に階層をつくっていた共同体の価値観が崩れ、経済の論理が社会全体を覆うのにつれて、急速に増えているという。
 小倉さんによれば、靖国参拝を「心の問題」に帰した小泉純一郎前首相、「人の心はお金で買える」と言った堀江貴文・前ライブドア社長、「自分探しの旅」へ出かけたサッカー元日本代表の中田英寿さんが、最近の日本の「三大おれちん」。全能感にあふれ、言ったことを実行する点が似ているという。
 そのスタイルに欠かせないのが、インターネットの活用だ。堀江前社長はもとより、小泉前首相はメールマガジンが人気を集め、中田さんはホームページで現役引退まで発表した。
 一般的に見ても、ネット空間は、個人の全能感の膨張を手伝っているように見える。何か分からないことがあっても、たとえば世界中の80億以上のサイトを検索できるグーグルを使えば、分かった気になれる。航空写真ソフトを操れば、自宅から地球全体までの姿を、神の目を持ったかのように簡単に俯瞰できる。
 小倉さんは「今の若者は昼間は、『分能感』の塊として働くのを企業に強いられるか、ニートとして『無能感』にさいなまれるかだ。夜になって『2ちゃんねる』などのネット空間で『全能感』を解放させるのはやむをえないのではないか」と話す。
 最近のスピリチュアルブームの背景にも、全能感の広がりを見て取れる、と弓山達也・大正大教授(宗教社会学)は指摘する。
 スピリチュアルをうたう催しで何度も見たのは、同じブースでカウンセラーに接して癒やされた相談者たちが、相談を終えるとあとは互いに名前も交わさず去る光景だったという。
 「一見悩みを共有しているようで、横の関係が何ら構築されていない。『自分が気持ちよければいい』と考え、他者に無関心な人が多いのではないか」
 このまま「おれちん」ばかりが増えれば、共同体が完全に壊れ、社会が成り立だなくなるのではないか。
 明治大の諸富さんは「個が生きるつながり」をキーワードに挙げ、「ミクシィ」といったソーシャル・ネットワーキング・サービスなど、ネットを活用した人間関係も否定しない。
 一方、「気づき、語り、変わる」という人の営みで今はまず「語り」が必要、と指摘するのは弓山さん。「自分で認識したことを言語化し、他者へ働きかける。その小さな実践の積み重ねを信じるしかない」
 昨年末に教育基本法が改正され、国と郷土を愛する心、学校、家庭、地域が役割と責任を自覚すべきことが法律に記された。そんな風に、高度消費社会に伴い崩れたかのように見えるかっての共同体の価値観を、上から再構築していくのか。それとも個人レベルの関係性を土台にしながら、価値観を共有していくのか。「今年は日本社会がどちらへ行くのかの分かれ道」と小倉さんは見る。
 他者とかかわるなかで、一人ひとりが立ち止まり確かめながら、世界と向き合う「モノサシ」の精度を少しずつ高めていくこと。この21世紀に、それは可能なのだろうか。
 
 阪神大震災と寅さん
 
 本年(平成19年)1月17日は、6434人が命を落とした平成7年の阪神大震災の第13回忌にあたります。命の重さを語り継ぐことの大切さを、改めて考えさせられました。
 1月27日夜のNHK衛星第二放送で、「男はつらいよ 寅次郎 紅の花」(平成7年作品)が放映されました。
 阪神大震災直後の実際の神戸でボランティア活動をする寅さんが、「阪神大震災 ボランティア元年」の文字とともに出る場面から始まりました。相も変わらず寅さんからの音沙汰がない柴又のくるまやに訪ねてきたのは、神戸の被災地で寅さんに助けてもらったという人でした。
 松竹映画「男はつらいよ」シリーズ48作目のこの作品は、主演の渥美清さんの死亡で、最終作品になりました。
 この最終作品の最終場面も、大震災後にようやく落ち着いた神戸の街で、復興を願って踊る在日朝鮮人舞踊団を背景に、寅さんが街の人たちと再開するシーンでした。
 山田洋次監督は、人間が生きることの奥深さを、その時々の世間の姿を借りて表現しているのでしょう。監督の持つ世間の目線の確かさが、48作のどれを観ても伝わってくるから、年齢・性別を超えて支持されたのでしょう。
 阪神大震災を「ボランティア元年」と画面に残した監督の見識に、心から敬意を表します。
このページのトップへ▲

Copyright (c)2001-2006 Nichiren Buddhism Modern Religious Institute. All Rights Reserved.