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人間と時代に関わることのあれこれ
日蓮宗現代宗教研究所主任 伊藤立教
少子化−出生率1.29で統計史上最低
厚生労働省が6月10日に発表した2003年人口動態統計によると、合計特殊出生率(日本人女性1人が生む子供の数の平均数)は1.29で、1899年の統計開始以来最低。20代後半の婚姻件数は約28万2千組で約1万7千組減少。平均初婚年齢は男性29.4歳、女性27.6歳で、ともに上昇。離婚件数は約28万4千組で、過去最低だった前年より約6千組の減。死亡数は約3万3千人増え、約101万5千人。自殺者数は約3万2千人で、過去最多。特に20代後半の死因に占める自殺の割合は4割で、飛び抜けて多い。
国では、平成14年1月公表「日本の将来推計人口」のデータをもとに、平成15年に「少子化社会対策基本法」「次世代育成支援対策推進法」「改正児童福祉法」を施行、具体的な対策を講じている。
「おかしいぞ!日本の結婚−時代錯誤で不自由すぎる『夫婦の形』」
というタイトルの「週刊ニューズウィーク日本版」2004年6月16日号記事によれば、世界では夫婦別姓・事実婚(同棲)・同性婚が結婚の潮流になりつつあるのに対して、日本では戸籍法による夫婦同姓しか認めないため、近代化に逆行する家父長制的家族制度が結婚の障害になっている、といわれている。結婚離れは先進国共通。結婚しなければ出生率も下がるわけで、韓国の出生率は1.17で世界最低。PACS(法的に認められた同棲)のあるフランスでは、同棲に対して法的税的保証が与えられている。
ローマ帝国は、人口減少で亡びた。国が少子化対策をとろうとしているが、それは結婚に対する法的制約の見直しから始まる。年金問題にも大きく関係する少子化問題は、最重要国策である。それにしても、今国会で改正年金法案が強行採決された翌日に日本の出生率が1.29であることが発表されたことは、年金法案に不利な基礎データを強行採決がおわるまで隠していたといわれても仕方がない。
高齢化−遠からず世界に例をみない水準の高齢社会が到来する
国が今国会に提出した平成15年度「高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告」によると、我が国の総人口は平成15(2003)年10月1日現在1億2762万人で、このうち65歳以上の高齢者人口の総人口に占める割合(高齢化率)は19.0%、男性1026万人、女性1405万人。百歳以上の高齢者は平成10年の1万人から5年後に2万人に倍増している。高齢者人口は昭和25(1950)年には総人口の5%であったのが、今後も平成32(2020)年まで急速に増加し、その後は安定的に推移すると見込まれている。総人口が平成18(2006)年にピークを迎えたのちに減少に転ずることから、高齢化率は上昇を続け、2015年には26.0%、2050年には35.7%に達し、国民の3人に1人が65歳以上の高齢者という本格的な高齢社会の到来が見込まれている。
高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」と呼ぶ。平成7年制定の「高齢社会対策基本法」は、「我が国の人口構造の高齢化は極めて急速に進んでおり、遠からず世界に例をみない水準の高齢社会が到来するものと見込まれている」(前文)と述べている。この法律は、高齢化の進展の速度に比べ対応が遅れている国民の意識や社会のシステムが、高齢社会にふさわしいものとなるよう不断に見直し、適切なものとしていくことを目指すものであって、社会のシステム全体にかかわるものであり、高齢者のみを対象とするようないわゆる「高齢者対策」よりも広い概念であることに留意する必要がある、とうたっている。
我が国の死亡率(人口千人あたりの死亡数)は、昭和22(1947)年に14.6%、平成14(2002)年は7.8。高齢者の死亡率は男女いずれの年齢層においても、女性の死亡率が男性の死亡率を大きく下回っている。
平均寿命は昭和22(1947)年には男性が50.06年、女性が53.96年であったのが、平成14(2002)年には男性が78.32年、女性は85.23年。65歳時の平均余命は、昭和22(1947)年には男性が10.16年、女性が12.22年であったものが、平成14(2002)年には男性が17.96年、女性が22.96年となっている。今後、平均寿命はのび続け、平成62(2050)年には男性が80.95年、女性が89.22年と見込まれている。
合計特殊出生率(15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、1人の女性が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子ども数に相当する)から、我が国では婚姻外での出生が少ないことから、近年の出生率低下は主として初婚年齢の上昇(晩婚化)や結婚しない人の増加(非婚化)によるものと考えられてきた。そこで未婚率をみると、昭和50(1975)年頃から25〜39歳の男性および20歳代の女性で上昇が際だっている。生涯未婚率は、男女とも上昇傾向にあって、平成12(2000)年には男性12.4%、女性5.8%で、男性の上昇幅が大きく、初婚年齢も男女とも上がってきている。結婚後の夫婦について、昭和35(1960)年以降に生まれた若い世代で、妻30歳および35歳時点での累積出生児数の実績値が期待値を下回っている。今後はこのような夫婦の出生力の低下が、晩婚化・非婚化とあわせて出生率の低下をまねくとの見方もある。
高齢化によって、労働力人口の高齢化も一層進展する。年金・医療・福祉における社会保障給付は、増加傾向が続いている。高齢者関係給付金の内訳は、年金保険給付費が全体の4分の3弱を占め、老人保健(医療分)給付費・老人福祉サービス給付費・高年齢雇用継続給付費と続き、社会保障給付費に占める割合は68.7%である。
平成14(2002)年現在、65歳以上の者のいる世帯数は1685万世帯で、全世帯(4601万世帯)の36.6%。65歳以上の者のいる世帯の内訳は、「単独(身)世帯」341万世帯(20.2%)、「夫婦のみの世帯」482万世帯(28.6%)、「親と未婚の子のみの世帯」263万世帯(15.6%)「三世代世帯」400万世帯(23.7%)となっている。高齢世帯の一般世帯総数に占める割合は、平成12(2000)年の23.8%から、37(2025)年には37.1%に上昇する見込み。今後、「単独世帯」の割合が上昇する見込み。
65歳以上の一人暮らし高齢者の増加は男女ともに顕著であり、昭和55(1980)年には男性約19万人、女性約69万人、高齢者人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%であったが、平成12(2000)年には男性約74万人、女性約229万人、高齢者人口に占める割合は男性8.0%、女性17.9%。男性の一人暮らし高齢者の割合が大きく伸びる見込み。
女性高齢者の2人に1人が配偶者なし。また、未婚率は男性1.7%、女性3.3%。離別率は男性2.2%、女性3.5%で、上昇傾向。
高齢者と子との同居率は、平成14(2002)年現在、47.1%と低下傾向にあり、逆に夫婦のみの世帯に属するものは35.1%と上昇傾向。
別居している子との接触頻度をみると、「ほとんど毎日」、「週に1回以上」の合計が男性では45.3%、女性で48.4%であるのに対して、「月に1〜2回」、「年に数回」の合計は男性で51.4%、女性で50.5%。
国は、平成7年12月から「高齢社会対策基本法しを施行、13年12月、新しい「高齢社会対策大綱」を閣議決定している。
日蓮宗ここにあり、の宗門運動
この年次報告書は第159回国会提出文書で、これを官庁まで出かけて入手し届けてくださった信徒M氏は、この3年間、毎週さまざまな情報を郵便や電話で現宗研に送ってくださっている。彼が願っているのは、日蓮宗が社会の目線にたった布教教化で教線を拡張し、法華経・お題目・日蓮聖人の教えが末法の現代を救うことである。
彼は言う、お寺さんが檀家や信徒の実状を知ってほしい、自分のお寺の檀信徒の65歳以上の人数調査をしてみたらこの年次報告の内容が納得できる、国は少子化・高齢化を前提に国家規模で対策を始めている、お坊さん達のほうから行政や社会に積極的に対応してほしい、日蓮宗ここにありと誇示してほしい、日蓮聖人ご生誕800年は少子高齢化社会の真っ只中、これを念頭においた宗門運動を展開していただきたい、と。
有事関連7法が成立
本年(平成16年)6月14日、日本有事や大規模テロヘの「備え」として政府が進めてきた有事法制の骨格となる有事関連7法が、参議院本会議で自民・公明・民主3党などの賛成多数で可決、成立した。
7法とは、主に外国からの攻撃の排除を目的とする 外国用品等海上輸送規制法 米軍行動円滑化法 改正自衛隊法 交通・通信利用法と、国際人道法の実施などを主目的とする 国民保護法 国際人道法違反処罰法 捕虜等取り扱い法。また、7法に関連した3条約(改定日米物品役務相互提供協定と、国際人道法であるジュネーブ条約の2つの追加議定書)の締結も承認された。日本有事の際に国民を守るための避難や救助の手続きを定める国民保護法など、国民の私有財産や生活・人権に関わるものであるが、日本弁護士連合会が審議不徹底を指摘して、国民的な議論が必要だったとしている。
これで、昨年6月に成立した武力攻撃事態対処法などとあわせて運用されることとなる。
さらに自民・公明・民主3党は、日本有事だけでなく大規模テロや大災害も対象とする包括的な「緊急事態基本法案」を来年の通常国会で制定することを合意している。
憲法解釈と教育基本法解釈−宗教教育の立場から
有事法制は、自衛隊のイラク派遣、国連平和維持軍参加とともに、日本国憲法との整合性が問われるが、政府が十分な説明責任を果しているとは思えない、といわれている。
15年戦争への協力を強いられた日蓮宗は、そのつらい歴史の反省から生まれた日本国憲法の不戦平和精神を、仏教的立場から理解するものである。と同時に、戦前の教育勅語による思想統制教育への反省から、国家が教育内容に介入しないようにと願ってつくられた教育基本法も、個人を尊重する日本国憲法と一体のものとして、仏教的立場から理解するものである。
近年、教育現場の崩壊は教育基本法が原因だから改正すべしという議論がおこって、政府が検討に乗り出している。また、宗教教育がなおざりにされたから社会がだめになった、という(実証不可能な)主張もある、これに対して全日本仏教会は、平成15年2月11日、「適正なる宗教教育実現のための教育基本法第9条改正推進特別委員会」を設置、宗教教育を盛り込むよう要請することとなった。
その内容は、現行教育基本法第9条(宗教教育)第1項「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。」第2項「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。」に対して、
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右の現行法に対し、全日本仏教会としては中教審答申も勘案し、下記の3点を骨子とする条文化を行い、関係方面に働きかけていく。更に宗教教育の実現に対し、仏教会はもとより宗教界及び、広くは国民的理解が得られるよう対策を並行して講じていく。
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記
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「日本の伝統・文化の形成に寄与してきた宗教に関する基本的知識及び意義は、教育上これを重視しなければならない。」
| | 一、 |
「宗教に関する寛容の態度及び宗教的情操の涵養は、これを尊重する。」
| | 一、 |
「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗派教育その他宗教活動をしてはならない。」
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という立場で、政府に要請する、というものである、
これについて、要請文の修正のほか、そもそも特別委員会設置の正当性や要請文の内容に対する疑問・反対がおこり、加盟団体の中では、真宗大谷派が本年5月の宗議会で教育基本法改正反対を決議、宗務総長が全日仏と違う立場をとることもありうると表明したほかは、はっきりした賛成や反対の意思表示はない。
個人の領域への国家権力介入が戦前の不幸を招いた経験から、個人の基本的人権、特に思想信条の自由は最も尊重されるべきものであろう。靖国神社国家護持に反対し、「戦没者のための新たな国立追悼施設設置」に懸念を表明しているのも、先輩が営々として築いてきた平和が損なわれる気配を感じるからである。
日本国憲法や教育基本法自体に問題があるのか、その運用に問題があるのか、じっくり考えてみる必要があるのではないか。
「宗教」は善か
教育の現場に宗教を取り入れるという主張は、「宗教」性善説に依っているのであろう。が、オウム真理教事件で国民は、はっきりと「宗教」に対する不信感・警戒心を持った。
7月7日、オウム真理教元幹部ら4名が9年前の警察庁長官銃撃事件関与容疑で逮捕された。麻原彰光教祖はじめ幹部・信者多数の逮捕、教団解散命令実施の後も、アレフと名を変えて実質的なオウム真理教は残っている。出家信者も在家信者も信奉者も、たくさんいる。教団本部がある東京東都世田谷区烏山地区住民が作っている「オウム対策住民協議会ニュース」を見ていると、犯罪行為や反社会的行動への反省などないような実態がわかる。かつてこの教団を支持した著名な宗教学者がいたし、本宗にも、あれこそ本当の宗教教団だ、と賞賛した人がいた。しかして実態は、ご承知の通りである。オウム真理教事件を境に、宗教に対する世間の目が厳しくなった、という人もいる。「宗教」は性善である、と宗教者が口で言うのではなく、その行いで示すべきであろう。戦前の日本は、戦時体制に宗教が組み込まれ、戦争協力を強いられた。「宗教」は性善ではない、という実例のひとつである。少なくとも仏教が、人を殺せ、とは言えないはずである。それを言わされた時代を、二度と再現させてはならないと思う。
(7月28日、実行犯が特定できず、東京地検は起訴を断念し、刑事処分を保留したまま、4人を釈放した。)
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