日蓮宗 現代宗教研究所
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宗報 平成16年度6月号 第195号 改訂 第27号

現宗研資料ノート
 顕正会『諫暁書』第二弾について
日蓮宗現代宗教研究所主任 伊藤立教 

 昨年(平成15年)末、会員が公称百万人になった冨士大石寺顕正会(顕正会、けんしょうかい)は、冨士門流(日蓮聖人直弟六老僧日興上人の系統中、大石寺を中心とする門流)の正統を名乗り、冨士門流独特の教義、とくに国立戒壇論を言い張り、高校生以上の青年信者が多い、日蓮正宗法華講から独立した新興教団です。
 その強引ともいえる勧誘方法や、入信した子供と家族の対立などが、各地で問題になっています。
 日蓮宗寺院や教師に対して法論の申込や折伏があるほか、檀信徒の子弟の入信についての相談が、宗務院総合相談所や現宗研に寄せられています。
 本年(平成16年)5月16日(日)には、横浜国際会議場で3万人の高校生大会が開かれるそうです。
 
  顕正会『諌暁書』第二弾について
 この顕正会が、本年(平成16年)4月28日、『再び日本国民に告ぐ─日蓮大聖人に背く日本は必ず亡ぶ』を、機関紙「顕正新聞」号外として発行しました。
 「日本一同の仏法違背に加え、創価学会の御遺命違背。この二悪が鼻を並べるゆえに、日本はいま亡びんとしているのである」(同書20頁)と書き出し、巨大地震・国家破産・大飢饉・大疫病・他国侵逼等が切迫していることを述べ、「いま起こらんとしている巨大地震の連発は何の先表であろうか。時を以て論ずれば、まさしく他国侵逼の前相であり、同時に三大秘法広宣流布の大瑞であると、私は確信している」(同書23頁)と主張し、「『時に隣国の怨敵、かくの如き念を興さん。当に四兵を具して彼の国土を壊るべし』(報恩抄)は事実となる。日本に残された時間は少ない─。立正安国論の「其の時、何んが為んや」同奥書の「未来亦然るべきか」の仏語は重い。早く日蓮大聖人の仏法を根底にした新しい日本を築かなければならない。さもなければ取り返しのつかぬことになる─」(同書232頁)と締めくくっています。
 著者は顕正会会長浅井昭衞、発行は冨士大石寺顕正会、B5判、本文232頁、定価千円。
 平成9年7月13日発行の『日本国民に告ぐ!日蓮大聖人に帰依しなければ日本は必ず亡ぶ』、いわゆる『諌暁書』と全く同じ体裁で、いわば『諌暁書』第二弾といえます。こちらは、著者は浅井昭衞、発行は冨士大石寺顕正会、発売は国書刊行会、B5判、本文104頁、定価千円です。
 前回と同様、日蓮宗諸機関や教師個人にも送られてきています。前回、新潟県のお寺へ檀家総代が駆け込んできて、「日蓮宗が、このような良い本を出している。うらの檀信徒にも配ってほしい」というので見てみると、この『諌暁書』だったという話がありました。
 もちろんこの『諌暁書』は、顕正会の宣伝のためのもので、初期創価学会に似た組織や行動をする日興門流大石寺系新興教団の考え方が書かれており、日蓮宗とは全く相入れぬ内容ですが、大石寺系独特の主張を断定的に書いてあるため、「わかりやすい」のでしょう。
 真疑未決御書を用い、御書の読み方を変えたうえで構成される論理に、客観性はありません。
 顕正会については、『諌暁書』発行直後から現宗研で調査研究し、
 まる1 『顕正会について』 現宗研編、教化資料シリーズ26、平成10年12月1日、日蓮宗宗務院発行
 まる2 『顕正会〈I〉─日蓮正宗妙信講の新宗教化の過程』現宗研編、現代宗教研究別冊、平成11年3月23日、日蓮宗宗務院発行
 まる3 『顕正会〈II〉─近況・脱会カウンセリング・顕正会聖地天母山調査』現宗研編、研究別冊、平成13年3月23日、日蓮宗宗務院発行
を全教師に配布しました。

  平成9年『諌暁書』との違い
 平成9年の『諌暁書』は、平成9年のへール・ポップ彗星大接近を文永元年の大彗星に見たて、日蓮聖人が『立正安国論』を書かれた世相に似ているから、平成の自界叛逆難・他国侵逼難に備えよ、そのために顕正会に入信して日本をまもれ、という内容です。
 目次をあげれば、次の通り。
  序 章 日本国いま亡びんとす
  第一章 亡国の根本原因
  第二章 「日蓮によりて日本国の有無はあるべし」
  第三章 亡国の予兆
  第四章 立正安国論
 入信して冨士大石寺正統の教えを日本国中にひろめ、その暁に国立戒壇を建立し、弘安二年戒壇御本尊(いわゆる板本尊)を安置して仏国とせよ、という主張です。
 平成16年の『諌暁書』第二弾は、書名がわずかに違うのと、頁数が倍増したほかは、体裁は全く同じです。
 目次をあげれば、次の通り。
  序 章 日本国いま亡びんとす
  第1章 日蓮大聖人とはいかなる御方か
1 末法下種の本仏
2 釈迦仏の予言証明
3 大智恵、大慈悲、絶大威力
4 竜の口の大現証
5 蒙古の責めの大現証
6 「日蓮によりて日本国の有無はあるべし
  第2章 亡国の二因
1 日本一同の仏法違背
2 創価学会の仏法違背
  結 章 日本に残された時間は少ない
 近年発生が予想されている東海・東南海・南海地震同時説をあげ、日蓮聖人が立正安国論著述の原因となった正嘉元年の大地震になぞらえ、「他国より此の国をほろぼす」亡国の予兆と見立てています。
 前書と違うのは、それ以後の日蓮正宗と創価学会の対立・破門、正本堂の取りこわし、戒壇御本尊(いわゆる板本尊)の移動、日蓮正宗(とくに現阿部日顕管長)と創価学会批判に紙数を多く割いていることです。
 顕正会が、国立戒壇に対する考え方の違いから、日蓮正宗・創価学会と対立し、正宗から破門されても国立戒壇建立を言いつづけ、会員をふやしつづけているなか、「不思議な事実」として、国立戒壇に安置される御本尊が、不信者の建立した正本堂から出たあと、正本堂が取りこわされたことを書いています。

  顕正会から見える問題点
 顕正会の教義は、日蓮本仏論、板本尊奉安、二箇相承による正統主張、「三大秘法抄」による国立戒壇冨士建立論のほか、「観心本尊抄」流通分の「此の時、地涌千界出現して、本門の釈尊の脇士となりて、一閻浮提第一の本尊、此の国に立つ可し」を、「此の時、地涌千界出現して、本門の釈尊を脇士と為す一閻浮提第一の本尊、此の国に立つ可し」と原漢文を読みかえて意味を全く異にし、末法下種の導師を地涌の菩薩とする釈迦脱仏論など、典拠・論理ともに客観性をもたない内容が問題です。
 教団そのものの問題としては、その異常な反共産主義と、「日本」国家意識の強さです。
 亡国は中国・朝鮮・ロシアからの侵攻からおこる、と断言したうえでの強引な論理には、無理があるように思われます。
 他方、創価学会への攻撃も激しいものがあります。
 こうした反共産主義・反創価学会の姿勢が、一定の支持を受けている側面もみられます。
 加えて、家庭の崩壊、父親の不在(存在感のなさ)が、父親にかわる会長先生、家庭にかわる班組織、杜会に対する使命感を与えてくれる顕正会への親近感、帰属意識をもたせるのでしょう。
 
※『諌暁書』第二弾は、顕正会本部からの寄贈本一冊のほか、資料として十冊入手してありますので、貸し出しに応じます。現宗研にご一報下さい。
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