日蓮宗 現代宗教研究所
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宗報 平成15年6月号 第183号 改訂 第15号
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日本の若者は殺さない
日蓮宗現代宗教研究所主任 伊藤立教
朝日新聞平成15年4月4日付特集記事「世界の鼓動−こんな私たち白書
」は、「日本の若者は殺さない 上」で、次のような内容でした。
進化生物学の立場から殺人の研究をしている長谷川真理子早大教授は、
日本の若者は、おそらく世界一、人を殺さない若者だ、という。
犯罪精神医学の影山任佐東工大教授も、
これは欧米にもアジアにもない、日本特有の現象。日本では、なぜ殺人が起こるのかということより、なぜ起こらないかを研究した方が良い、と書いたドイツの犯罪学教科書まである、という。
法務省法務総合研究所の小柳武総括研究官は、
殺人は、エネルギーがなければできない犯罪、という。同研究所の02年版犯罪白書によると、若者の暴行・傷害・強姦などが激減。総じて暴力犯罪のエネルギーが少なくなっている、といえる。
として、不登校・引きこもり・いじめなどの新たな問題もあるが、殺人を頂点とする暴カ犯罪の激減は今の若者たちの大きな長所、と締めくくっています。
翌日の同特集記事「下」では、これらを受けて、
長谷川真理子早大教授は、
失いたくないものを多く持つようになったからだ、とみている。
影山任佐東工大教授も、
60年近く戦争をせず、徴兵制度もなかった先進国は、ほかにない、という。
米カリフォルニア大サンタクルズ校デーン・アーチャー教授は、
戦争に参加した国の殺人者率は上がる、という「暴力合法化モデル」研究がある。殺人者率の低さは日本の成功モデル、反戦・平和主義が極めて長い間続いてきたことに原因があると思う、という。
としています。
太平洋戦争後の日本を、世界にも稀な非戦憲法のもとで先人が努カを重ね、平和な社会を築き上げてきました。猪口邦子国連軍縮大使は、日本は世界に誇る軍縮大国として高い信頼を得ている、といっています。
この平和と信頼を損なうような、平和ぼけ、はいけません。まして、いつか来た道、への逆戻りは、とんでもありません。
アメリカのイラク侵攻から3週間目の4月10日、米英軍は首都バクダッドを占拠しました。一昨年9月11日のアメリカ同時多発テロから始まった報復攻撃は、テロ組織壊減、テロ支援国家攻撃、テロ国家指導者追放・民主体制樹立と名目を変えてきましたが、国連決議を経ない先制攻撃、アメリカがおこした戦争であることは、あきらかです。
日本政府は、3月20日のイラク侵攻開始と同時に、国連中心外交から日米安全保障条約(略称安保条約)を基とする外交に変更しました。これは、重大な外交方針の変更です。
また、前国会で廃案となった有事法制や個人情報保護法案を提出し、成立させようとしています。
なぜこの時期に有事法制の成立を急ぐのか、私たちとの関わりの中でよく考えてみる必要があるでしょう。(個人情報保護法案<関連5法案>が、5月23日に成立しました。有事法制<関連3法案>も、今国会期末の6月18日までに成立の見込みです。)
冒頭の引用記事には、こうも書かれています。
一方、中高年の殺人は若者たちほどには減らず、殺人の面では20代前半の男たちより血気盛んということになる。
力ずくで言うことをきかせるのではなく、智慧を出しあって懸案を解決したいものです。
戦争と宗教
今朝4月11日の朝日新聞オピニオン欄記事「三者三論−戦争と宗教」の要旨をご紹介して、宗教人として、仏教者として、日蓮宗徒としてお考えいただく材料とさせていただきます。
キリスト教信仰者の作家曽野綾子氏は、
ブッシュ大統領のしていることは限定的な復讐法のハムラビ法典に近く、キリスト教に反している。今回の戦争に宗教対立が絡んでいるとの見方は間違い、戦争は政治がやるもの。非戦闘員が死なない戦争などあり得ない、だ
から戦争は悪い、という。
天台宗天台寺住職の作家瀬戸内寂聴師は、
3月4日付朝日新聞に意見広告「反対 イラク武カ攻撃」を出したが、美辞麗句を並べても戦争は集団人殺し、反戦の意思表示を、と考えた。日本の仏教界が今回たくさん戦争反対の声を上げたのはいままでになかったこと、アメリカに正統性のなかったことが声を上げやすくさせたと思う。世界一強く豊かなアメリカは戦争を仕掛けるのではなく、慈悲を持つべき。武力でテロはなくならない、いち早くアメリカを支持した日本もアメリカと共に不名誉を残すだろう。戦争のさなかに戦後復興をうんぬんするのは不謹慎、という。
親子三代にわたるイスラム教徒の鈴木紘司氏は、
同時多発テロ以後、イスラム教徒に対する無理解と偏見が耐えられないものになっている。偏見は憎悪に結びつきやすい。アラブの人々にアメリカヘの反感を植え付けたのは、宗教ではなくて政治だと思う。フセイン大統領もブッシュ大統領も宗教の相違を上げているが、その狙いを理解できない。イスラムの考え方は唯一神が絶対の存在、人間中心の考え方は認めない。武力至上論・科学万能主義・経済最優先といったアメリカ的な考え方も排除の対象になるから、戦争以上に戦後は大変、という。
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