日蓮宗 現代宗教研究所
Nichiren Buddhism Modern Religious Institute
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宗報 平成15年5月号 第182号 改訂 第14号

公開シンポジウム「インターネットと寺院・評価と実践」参加報告
日蓮宗現代宗教研究所 デジタルプロジェクトチーム 

 1、はじめに
 去る二月十四日(金)に浄土宗総合研究所主催のインターネットと寺院・評価と実践」と題する公開シンポジウムが開かれた。その趣旨は、近年急速に普及したものにインターネットがあります。あるひとは地球上で恐竜が絶滅した状況を引用して、、このインターネットを『隕石』に喩える人が居ます。たしかにインターネットの普及が進むにつれて、我々の生活にも変化がでてきました。今シンポジウムは浄土宗をはじめ各宗派の情報担当者にお集まりただき、インターネット利用の現状と問題点、その有効性の評価等についてパネルディスカッション形式で討論し、今後のインターネット・ホームページの利用方法を明らかにしようとするものです。」というものであった。
 日蓮宗現代宗教研究所(以下、現宗研)においては、日蓮宗各寺院のインターネット利用人口やどのようなホームページを作成しているか、あるいはその効果などに関して、また現状分析と将来性について研究していない。そこで、現宗研にも参加案内があったため、デジタルプロジェクトから4名が参加した。
 当日のプログラムは次の通りであった。
 
 1時 開会式
挨拶 浄土宗教学局長  袖山 榮眞師 
 1時15分  基調講演 「寺院ホームページの現状」
浄土宗総合研究所専任研究員  今岡 達雄師 
 2時15分  休憩
 2時25分  パネルディスカッション 「寺院ホームページの将来」
コーディネーター 今岡 達雄師 
コメンテーター 國學院大學教授  井上 順孝氏 
パネリスト 曹洞宗総合研究センター専任研究員  菅原 壽清師 
天台宗総合研究センター企画委員  谷  晃昭師 
浄土真宗宗務情報システムセンター専門委員  筑後 誠隆師 
○発題1人15分×3人(パネラー)
○コメント15分(コメンテーター)
 3時30分  休憩(コーヒーブレイク)
 4時  ディスカッション
○質問回答1人10分×3人(パネラー)
○コメント(コメンテーター)
○自由討議
 5時  開会式
 以下、基調講演、パネルディスカッション、ディスカッションの順に内容を要約し、最後に所見を述べておきたい。

 2、基調講演
 基調講演において今岡達雄師は「寺院ホームページの現状」と題して、まる1インターネットの展開と仏教寺院の対応、まる2一般寺院におけるホームページの運用、まる3寺院ホームページに関する調査(ウェブ上においてアンケート調査)まる4寺院ホームページの将来について述べられた。
 まる1インターネットの展開と仏教寺院の対応では、1993年以来、日本での商用インターネットサービスが開始され、.それから十年になる。特に多く利用されるのは、情報検索・情報提供・通信販売・窓口サービス・オークション・出会い系サイトなどである。利用率の高いサイトは、一日10万件を超えるアクセス(閲覧者)がある。それに比べて寺院のサイトは、多くて一日20〜30程度である。アクセスカウントから考えるとサイトとしては成功していないのではないか。果たして続ける意義はあるのか、と疑問を提示された。
 まる2そこで、一般寺院におけるホームページの運用について具体的に、ホームページの開設寺院数、稼働状況、内容、アクセスカウンタ(アクセス数とHPの内容)、レスポンス(メールアドレス、掲示板)、オリジナル・ドメイン等について調査された内容を示された。
 開設寺院数は、浄土宗においては321件あり、そのうち個々の寺院が運営しているのは118件で、全寺院6929件のうち1.7%にあたる。さらに真宗十派(本願寺派、大谷派、高田派、仏光寺派、興正派、木辺派、出雲路派、誠照寺派、三門徒派、山本派)の各々の数値をあげ、合計寺院数27,759件中ホームページを開設している寺院は、645件あり、そのうち個々の寺院が作成しているホームページは423件にのぼり、トータルの比率は1.5%であることが指摘された。
 さらに各寺院が作成していると思われる423件のホームページのうち稼働していないと思われる所があり、実際にアクセスできる件数は325件であることが突き止められた。これは423件の内の約76.8%にあたる。
コンテンツの宗派別特徴
 浄土宗真宗十派 日蓮系 
 全数 自主制作
サンプル数29289255184
1.寺院概要 99.0% 96.6% 63.1% 79.3%
2.年中行事13.0%42.7%29.4%38.6%
3.広報2.4%7.9%11.4%6.5%
4.教義2.4%7.9%23.5%22.3%
5.法話5.1%16.9%32.5%17.9%
6.活動報告3.1%10.1%17.6%18.5%
7.事業広告9.9%32.6%7.1%29.9%
8.エッセイ3.8%12.4%19.2%21.2%
9.レスポンス6.5%21.3%8.2%30.4%
10.その他2.4%7.9%10.6%18.5%
11.個人HP0.0%0.0%4.3%21.7%
 次にホームページの内容を宗派別(天台宗系・真言宗系・曹洞宗系・臨済宗系・その他禅系寺院に関しては現在解析中)に調べている。その一覧が、「コンテンツの宗派別特徴」(右図)である。浄土宗の特徴としては、寺院概要(由緒あるいは沿革)、事業公告(行事等の参加要請など)、レスポンス(掲示板設置やメーラーの自動起動など)が比較的多いことが指摘された。また、真宗十派は教義、法話が多いこと。日蓮系では教義、事業公告、レスポンスが多いことなどである。
 ホームページへのアクセスカウンタ数は、100までが1%、100から1,000までが8.7%、1,000から1万までが59.7%、1万から10万までが29.6%、10万以上が1%であった。
 あるホームページでは、ページごとにカウンタを付けて、どの内容に対するアクセスが多いのか知ることができる。ここでは、宗玄寺のホームページを取り上げ、葬儀・法要に関する内容に対するアクセスが多いことが指摘されている。
 以上のような分析から、大半の個々の寺院で作成しているホームページに対するアクセスは非常に少ない(一日2・3回程度)こと、興味を持たれるページは葬祭関係であることなどが解る。
 まる3寺院ホームページに関する調査(ウェブ上においてアンケート調査)については、ホームページ(http://www.jsri.jp/result.htm)にて公開されている。
 「いつ(開設時期)」「どなたが(発案者・作成者)」「だれ宛に(発信対象者)」「どんなコンテンツを(内容)」「効果はあったか(効果)」「今後も続けるのか(継続)」「回答者特性」などについてメールで質問状を通知し、浄土宗のアンケートページにて回答する方式で調査がなされた。724件へメールにて通知したところ、207件の回答があった。
 「いつ(開設時期)」については、1994年以降から2003年1月までで、年毎に集計されており、1994年には4件、翌年7件と順次増え続け、2001年には46件が新たにホームページを作成している。しかし、2002年には15件に減り、本年1月には1件であった。
 「どなたが(発案者・作成者)」について、発案者は住職が59.5%、副住職が21%であり、作成者は住職が50.5%.副住職が18.1%であった。
 「だれ宛に(発信対象者)」では、撰択形式の設問で、一般の人々と檀信徒へが31.9%、一般の人々・檀信徒・僧侶など全てが30.8%、一般の人々(不特定多数)のみが29.3%と9割以上のサイトが広く多くの人に向けて開設されていることが解る。
 「どんなコンテンツを(内容)」では寺院紹介が8割以上、年中行事紹介が7割近くあることがわかり、人生相談は3割弱、ネット上での参拝は1割あまりに止まっていた。
 「効果はあったか(効果)」について、広報活動としては、大変有効であるが24.1%、有効であるが55.2%と、ほとんどの人が効果があったと認識している。また、布教活動としては、大変有効であるが21.8%、有効であるが48%、どちらともいえないが23.3%であった。具体的な効果としては、メールや掲示板を通して面識のない人々の悩みや相談事に答えることができた(67件)、訪問を受けた(29件)、檀信徒とのコミュニケーションに役立った(20件)、檀家が出来た(7件)等の記述があった。
 「今後も続けるのか(継続)」については、99%が続けると答えている。
 「 回答者特性」としては、40歳代が31.7%、50歳代が30.2%、30歳代が25.6%、60歳以上が9.5%、20歳以下が3%であった。このことから、インターネットの利用者の年齢層(10代後半から30代)とは大幅に異なり、高年齢者層が多いことが示されている。
 以上のような分析結果を得たうえで、まる4寺院ホームページの将来として、いくつか提言されている。一つには、インターネットの普及から10年がたち、転機にきているが、今後の普及は、明らかな効果(皆が納得する効果)が無ければ普及しないのではないか。二つには、以上の結果をリアル(現実)の寺院活動の反映として受け止め、布教・教化・年齢等についてしっかりと把握し、今後の活動に役立てなければならないこと。三つには、今後包括団体のホームページと個々の寺院で運営するホームページの棲み分けが起るのではないか、ということ。これは、包括団体においては教義・経典等を中心に基礎的な情報を主に発信していくのではないか。また、個々の寺院においては、布教・教化の実践的な情報を発信していくのではないか。ということ。四つには、宗としての認証システムは必要か否かについて、現在のところ、浄土宗では申請があればリンクしているが、今後、個々の寺院で運営するホームページで内容が不適切な場合は考慮しなければならない、としている。

 3、パネルディスカッション
 ついでパネルディスカッションは、プログラムの通り、まる1曹洞宗総合研究センター専任研究員菅原壽清師、まる2天台宗総合研究センター企画委員谷晃昭師、まる3浄土真宗宗務情報システムセンター専門委員筑後誠隆師の3人が各15分の持ち時間で発題をされ、それらに対して國學院大學教授井上順孝氏が15分間コメントされた。
 まる1菅原師は、曹洞禅ネットの活動状況について5枚のレジュメをもとに話された。まず概況として、「曹洞禅ネット」(曹洞宗公式インターネットホームページ)の所轄が曹洞宗宗務庁であり、その組織は曹洞宗総合研究センターが、曹洞宗宗務庁より委託されて運営されている。運営は推進プロジェクト会議(常時6〜8名)が行い、関係諸氏を交えて月2回、さらに宗務庁各部課の担当者が集まり、年2回の会議を行って運営されている。
 主な活動は、ホームページの作成、メールの処理、リンクの処理などである。ホームページの内容は、一般・僧侶・研究者などを対象とし、編集会議に諮って方針を決定し、曹洞宗宗務庁の各部署より提供された情報を検討し掲載している。メールの処理はプライバシーに十分な配慮をして、プロジェクト会議で内容を検討して返信している。2000年1月から2002年8月までのメールの内容を分析したところ、寺院紹介が全体の12.1%あることから寺院の一覧を加え、潜在的檀信徒の掘り起こしを行う予定である。さらに寺院と檀信徒とのトラブルに関するメールもあったことから、行政へ反映させる予定である。
 リンクの処理は、宗門寺院・教育機関・研究機関・宗務庁等有益と判断できるページに限定してリンクしている。個々の寺院もリンクしているが、全てではない。内容に問題のあるサイトもあるため、今後どのようにリンク行うかについて、検討会を立ち上げたところである。
 最後に曹洞禅ネットの今後は、坐禅(教義)や禅の文化を中核にしながら、宗旨への誘いとしての周縁を充実させていくことが必要である、と発言された。
 ついでまる2天台宗総合研究センター企画委員の谷師は、これから宗門のホームページを立ち上げるところなので、今シンポジウムに学びたいとしつつ、ホームページの構成案等を示された。基本的には天台宗の特質である「受戒」をテーマに発信し、天台宗の紹介、開宗1200年大法会、「一隅を照らす運動」、仏教・仏事情報、メンバーズゲート(僧侶専用)などの内容で作成する予定である。また天台声明の音声や動画など、マルチメディアも取り入れる予定。リンクに関して、個々の寺院のリンクは認証方式を取り入れる予定である。
 まる3浄土真宗(本願寺派)宗務情報システムセンター専門委員の筑後師(http://www.daigo.or.jp/menu.htm)は本願寺派のホームページの運営に対して、宗務としてではなく個人的に助っ人として関わっている。
 本願寺派のホームページに個々の寺院のリンクや質問のページなどは設けていない。
 蓮如上人五百回忌の折りに、法要をストリーム配信でリアルタイムに放映した。これは、国内のみならずハワイ・ブラジル・北米などの方々に非常に喜ばれた。インターネットは informal(形式ばらない)なメディアなので、書いてある内容が固いとだれも見ない。講話や教義も、伝わるのか疑問である。
 また個々の寺院のホームページに対して、寺院のホームページには文字が多すぎるので、映像や写真を多くした方がいいのではないか。個人で内容を豊富にするのは難しいので、数人で協力する方がいいのではないか。僧侶のパーソナルな情報を載せると、よく見られる。
 その他、末寺にあってネットワークにはない基礎的資料があるので、それらをホームページに載せてほしい。あるいはブロードバンド化が進み、将来、テレビ電話での対応が必要になるかも知れない等の発言があった。
 これらの発題に対する國學院大學教授の井上氏のコメントは、インターネットに対する反応は、例えば会社の場合、いかにして会社の経営に役立つか、あるいは大学の場合、いかにして受験生を集めるのに役立つか等のように、「役立つかどうか」という議論はない。ホームページは無ければならないツールであって、いかに多くの人にアピールできるかが課題となっている。そのような社会状況と各寺院の状況には大きな隔たりがある、と指摘されている。
 今後は、伝達のプロセス(新聞・雑誌・テレビなどの「不特定多数」への伝達から個人の携帯端末へ直接通知する「特定多数」への伝達が可能になった)が変わったため、伝え方の本質も変わっていく。
 宗教界のホームページが止まった理由として、効果が現れないから、としているが、会社では無くてはならないものである。またホームページは「あればいい」という段階から「内容の充実」へと変わってきた。
 インターネットの特質として双方向性という点が上げられるが、リアルタイムのコミュニケーションにより(多数の)相手の意識が変わっていく。
 
 4、質疑応答
Q  ネット上の墓地参拝について
A  井上氏 現状ではバーチャル参拝などのホームページへは偶然行き着くことが多い。ネットで親しんで本物へ行き着くのではないだろうか。
A  筑後師 バーチャルは沢山つくればよい。きっと現実に会えるようになる。

Q  ホームページ作成にあたり、外部の業者を入れたらよいのでは?
A  谷師 5、6社から話しがきている。それらの中には放送局を作る案もある。が、我々自身が何を主張すべきか、精査が必要。

Q  著作権の問題
A  筑後師 自分の書いたものは放棄している。
A  井上氏 個人的な盗用は解らない。一般的にはホームページに COPY RIGHT と明記しておくこと。

Q  携帯のコンテンツが必要か否か。
A  筑後師 必要。

Q  ホームページでなければできないこと
A  筑後師 ハイパーリンク。一例としてブリタニカやエンカルタなどの百科事典。

Q  ホームページの内容について
A  今岡師 対話形式のものがよく見られる。若い人の間では掲示板がよく使われているので、対話形式のものは疑似チャットの効果があるためかも知れない。

Q  檀信徒とのコミュニケーションとして使えるかどうか。
A  今岡師 使える。寺報をメールで送ったり、メールで法要の塔婆の依頼がくることもある。が、これらはホームページを作っている人の能力に依存する。

 最後に各コメンテーターから一言ずつあり、菅原師は、今後ネットの役割として利点を残していきたい、とのこと。筑後師は、実際に会うことが大切であり、僧はみんなに見られている、という意識が必要であり、ストリーム配信は有効である。とのこと。井上氏は、インターネットは大変革であり、大きな時代の変化である、とのこと。

 5、おわりに
 以上のことから、寺院におけるインターネットへの対応が非常に遅れていることが理解できる。
 そこで、日蓮宗において今後なされなければならないと思われることを列記しておきたい。
 一、 組織的な対応が必要ではないだろうか。インターネットは、特定多数のみならず不特定多数へのコミュニケーションが可能である。このため包括団体(宗門)としての対応をする場合、インターネット部門を組織的な位置づけのもとに設けて対応することが求められる。
 二、 社会問題へのコメント。脳死、クローン、イラク問題など、宗教倫理に関する問題に対するコメント(声明)をいち早く的確に知らせることが求められる。
 三、 基礎的な資料のデジタル化。教学に関する資料をはじめとして、各寺院に伝わる伝記や様々な文化的資料等のデジタル化が求められる。
 四、 事務処理の省力化。電子認証技術が発達してきたので、ブラウザまたはメールによる個々の寺院の特定が確実になってきた。そこで、各種の書類をメールで送受信し処理することにより、事務処理の省力化を図ることが求められる。

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