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伊豆におられたのはあしかけ三年、一年九ヶ月の流罪が許された聖人は、「いま両親に会わなければ二度と会えないかもしれない」と、故郷へ帰られました。
家では、お母さまの梅菊さんが瀕死の床に伏しておられ、急いでお題目を唱えて祈られたところ、たちまち病気が治って、再会を喜ばれました。
しかし、そんな喜びもつかの間、小松原というところで、かねてから恨みをもっていた東条景信が襲いかかり、弟子の鏡忍房(きょうにんぼう)と信者の工藤吉隆(くどうよしたか)さんが殺され、聖人も額を斬られたうえ、左手を折られるという重傷を負わされました。
斬りつけた東条景信は落馬し、難をのがれた聖人は、家のものに迷惑をかけないよう、家の近くの岩穴に身を隠され、通りがかりの老婆から贈られた綿帽子をかぶって寒さをしのがれました。